【プロ野球】金村義明が語る
「金本知憲は最高の人間、最強の選手だった」
今シーズン限りでの引退を発表した阪神タイガースの金本知憲選手 9月12日に今シーズン限りでの引退を発表した阪神タイガースの金本知憲選手。21年の現役生活では1492試合連続イニング出場の世界記録を達成するなど、球界の「鉄人」として活躍。さらに球界の「アニキ」としても親しまれ、チームの枠を超えて多くの選手たちに慕われた。金本選手の魅力とは何だったのか? 公私ともに親交のある野球評論家の金村義明氏に語ってもらった。
今回の金本の引退発表はあまりにも突然のことで驚きましたけど、それと同時に「ついにこの時が来たか......」という感じでした。ここ2、3年というのはケガとの闘いでしたし、特に昨年は肩の調子が悪くて満足にバットを振ることもできませんでした。そんな状態では結果も出るはずはなく、聞いていてかわそうになるぐらいのヤジを浴びせられることもありました。それでも言い訳ひとつせずに、いま自分のできることに全力を尽くす。その姿を見た時に、金本という選手のすごさをあらためて思い知らされました。
ただ、今年に関しては肩の状態も良くなっていたみたいで、昨年とは比べものにならないぐらい素晴らしいスイングをしていました。このスイングができるのなら、まだまだやれるだろうと思っていたんですけどね......。責任感の強い男ですし、チームの成績がよくなかったことも引退を決断した大きな理由になったんでしょう。それに球団史上初となるGMを置き、チームを改革すると同時に若返りを図ろうとしている。そんなこともあって、自ら身を引いたと思います。
引退会見で「もっと練習していれば」というようなことを言っていましたけど、僕からしてみれば金本ほど練習する選手は他にいないと思います。東北福祉大から4位で広島に入団したように、決して大きな期待をされてきた選手ではありませんでした。実際、入団当時はガリガリでバッティング練習でも内野の頭を越すのがやっと。以前、金本が「いつクビと言われても不思議ではなかった」と言っていましたけど、本当に最初はそれぐらいの選手だったんです。でも、そこから努力を重ねてレギュラーを獲得し、気が付けば球界を代表する選手にまで上り詰めていました。
「1回でも二軍に落ちてしまうと、二度と上がって来られないんじゃないか、という怖さは常にある」と言っていたのが印象に残っていますが、そういう気持ちがあったから「痛い」なんて絶対に言わなかったし、どんなことがあってもグラウンドに立ち続けていました。
1 / 2