【プロ野球】後半戦への大きな一歩。
斎藤佑樹が球宴で掴んだ「ある感覚」
オールスター第1戦の先発を任された斎藤佑樹だったが、2回に中村紀洋に逆転の一発を浴びた 大阪の夜。
斎藤佑樹は殊(こと)の外、ご機嫌だった。
「"もうちょっと"が、やっとつかめた気がするんです」
7月20日、オールスターゲーム。
ファン投票1位で選出された斎藤は、オール・パシフィックの先発としてマウンドに上がった。6月6日以来、勝ち星に見放されている斎藤ではあったが、この日は立ち上がりからキレのいいストレートがストライクゾーンに決まっていた。先頭の長野久義をストレート2球で追い込み、3球目、ストライクゾーンいっぱいからボールゾーンへ滑るスライダーで空振りの3球三振に斬って取る。さらに2番の鳥谷敬に対しては、いわゆる"バックドア"と呼ばれる左バッターのアウトコースにカットボールを使うという、シーズン中には見たことのなかった攻め方を試して、セカンドへゴロを打たせた。3番のアレックス・ラミレスへ投げたストレートも力負けすることなく、これもセカンドゴロに打ち取って、斎藤はセのトップから3人を6球、すべてストライクで三者凡退に仕留めた。
開幕から6試合で4勝を挙げながら、その後の10試合では1勝。勝つことの難しさを痛感しながら、前半戦を5勝7敗と黒星先行で終えた斎藤。与えたフォアボール43個、打たれたヒット109本はいずれもリーグワースト。最近は、きわどいところを攻めてボールが先行し、カウントを悪くして投げるストライクを痛打されるという悪循環に陥っていた。
だからこそ、斎藤はある決意を胸にオールスターへ臨んでいた。
大胆に、しかし力を抜いて、ストレートをストライクゾーンへ投げる――。
斎藤は華やかな舞台で、懸命にその決意を実践しようとしていた。
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