【プロ野球】後半戦への大きな一歩。斎藤佑樹が球宴で掴んだ「ある感覚」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 一方の斎藤は、チームバスの手前で報道陣に囲まれ、慎重になりすぎたのか、という問いかけに、しばし押し黙った。

「うーん……そうですね……」

 次の言葉を発するまで、約15秒。

「慎重になったということはないです」

 ようやく絞り出した言葉と、その時の彼の苦悶の表情から、今の斎藤が感じているであろう歯痒さのようなものを感じた。

 いったい何が歯痒いのか。

「ほんのちょっとのことだと思います。もう少しのところまで来てる。そのもう少しをできない感じが歯痒いですね」

 序盤の3回まで、田中が打たれたヒットは3本、うち2本がツーベースだ。

 斎藤が3回までに打たれたヒットは2本で、いずれもシングル。しかし、4つのフォアボールと1つのデッドボールを与え、3回には犠牲フライで1点を失った。

 中盤、4回から6回までの田中は、やはり3本のヒットを許し、うち1本がツーベース。得点圏にランナーを背負いながら、得点を許さない。

 一方の斎藤は4回、フォアボールで出したランナーをバントでセカンドに送られ、タイムリーを打たれて2点目を失う。5回も得点圏にランナーを背負いながらそこはゼロに抑え、0-2で迎えた6回裏。

 満塁から3番の松井稼頭央に走者一掃のツーベースヒットを打たれて、ついに試合が壊れた。これで0-5。斎藤はこの回限りでマウンドを下りた。

 この日の田中と斎藤のピッチングの違いはどこにあったのか。

 一目でわかるのは、四死球の数だ。

 斎藤は6回を投げて自己最多の7個、田中は8回までを無四球で投げ切った。

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