【プロ野球】ソフトバンク・武田翔太こそ
本物の「ダルビッシュ二世」である (4ページ目)
彼の脳裏にあるのは、両親の背中に違いない。
「『プロに行けたよ』って報告できれば……」
「何を中途半端なこと言ってんの。プロに入って安心してどうすんのよ。『10勝できたよ』でないと」
「そこが僕の弱いところですよね」
当時のことを思い出しつつ、快挙の翌日だと連絡殺到だと思って、中一日置いて、連絡を入れた。
「お疲れさまです。ご無沙汰しています」
うわついた口調ではなかった。
「今日はオフで、楽しんでいます。遊ぶ時は遊ばないと」
19歳の口調とは思えない。
「この次か、その次、必ずやられるから、そこからが本当の勝負なんだよ」と余計なお節介をしたら、電話の向こうで「アハハハ」と笑っている。ひとしきり笑った後、最後にこう言った。
「気楽に投げます。この前と同じように」
今や全国に溢れる「ダルビッシュ二世」。しかし、本物の「ダルビッシュ二世」は武田だけだろう。最初に見た時はまだ無名の存在だった彼が、3年になると「高校生ナンバーワン」と称される投手にまで成長し、ドラフトでは福岡ソフトバンクから1位指名を受けた。ひょっとしたら、ダルビッシュをも凌ぐ大物になるかも……そんなことを想像させてしまう武田の秘めた力は、まだまだこんなもんじゃない。
著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。
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