【プロ野球】寡黙なエース、西武・岸孝之の奥底に眠る「熱」

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

昨年は入団以来初めて2ケタ勝利を逃した岸だけに、今季にかける思いは強い昨年は入団以来初めて2ケタ勝利を逃した岸だけに、今季にかける思いは強い安倍昌彦の投魂受けて~第22回 岸孝之(西武)

「岸、エースの7勝!」

 6月27日付けのスポーツ新聞に大きな活字が躍った。

 先発して7イニング投げて、ロッテ打線を1安打無失点8奪三振。投げ合った成瀬善久に追いつく7勝目を挙げた。

「岸、どれぐらいしゃべったのだろう......」

 記事中の「かぎかっこ」を数える。これが彼の記事を読むときの習慣になっている。60行ほどの記事の中に、彼のつぶやきのような「語り」が3つ。そのぐらいだろうな......。そう思いながら、6年前の春、東北学院大のエース(当時4年)だった岸孝之のボールを受けに行った日のことを思い出した。

「岸、初めての人にはほとんどしゃべらないですから。もしよかったら、私が同席して、通訳しましょうか」

 菅井徳雄監督のご親切をお気持ちだけいただき、やはり「ナマの言葉」がほしかったので、直接取材することにした。

「ウッス!」も「コンチワ!」も発することなく、見たこともないカッコいい選手がすぅ~っと監督室に入ってきた。貴公子、王子様......何でもいい。とにかく着ているものが、野球のユニフォームに見えない。正直、何をどう訊けばいいのかわからない。だって、雰囲気が「アイドル」なのだから。

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著者プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。

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