【プロ野球】決意のストレートで勝負の3年目に懸ける阪神・秋山拓巳
ルーキーイヤーの2010年には7試合に登板し、4勝を挙げた秋山拓巳安倍昌彦の投魂受けて~第19回 秋山拓巳(阪神)
阪神タイガースの秋山拓巳というピッチャーを忘れてはいませんか。
2009年に春夏続けて甲子園に出場し、その年ドラフト4位で阪神タイガースに入団。
そしてルーキーイヤーの2010年8月21日にプロ初登板で先発のマウンドに上がると、そこから約2カ月間、ローテーション投手として4勝をマーク。夏バテ、故障者続出で崩壊寸前だった阪神タイガース投手陣を支え、「救世主」などという見出しも躍ったほどだった。
長く中心投手として投げ続けるための体力作りと、自身の故障もあった2年目は、一軍登板は7イニングちょっとに終わったものの、今年はブレイクの兆しを見せている。
ここまで一軍昇格はないが、ファームで秋山らしい持ち味を発揮・キラリと光るピッチングを続けている。
4月28日、彼がプロへの扉をみずから開いた甲子園球場の、それもナイトゲームだった。コンスタントに140キロ前半をマークしながら、145、6キロの速球で三振を奪い、カットボールで芯を外し、フォークでスイングを崩しながら、わずか3安打の無四球完封でウエスタンリーグ最強のソフトバンク打線をねじ伏せた。その後も広島を7回3失点に、さらにソフトバンクを再び7回零封。
そして、5月24日のオリックス戦(神戸第二)がすごかった。
先発して快調に飛ばして6回、グラウンド整備あとの「空白の時間」で調子を崩されがちなその回を3者連続三振。駿太、縞田にはストレートで押し、ベロスにはフォークで仕留めた。
一軍に上げてくれよ、オレを!
秋山のピッチングに「叫び」を感じた。
あとふたり抑えたら完封の9回、前の打席にフォークで三振を奪ったベロスに、そのフォークを待たれた。バックスクリーンの横に消えて行く打球を見ながら、秋山は全身で悔しがった。
その「心意気」がほしかった。上げてもらうなら、今。旬を感じた。
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プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。