【プロ野球】栗山監督が行なった荒療治で斎藤佑樹は覚醒するか?
試合前、神宮での登板を「楽しみにしている」と語った斎藤だったが、3回54球で降板となった 目を疑った。
4回表、2点を追うファイターズの攻撃はワンアウト1、3塁。バッターボックスには8番の鶴岡慎也が入っている。次のイニングに備えてキャッチボールをしていた斎藤佑樹が、いったんベンチに引き上げた。もちろん鶴岡の次に回ってくるであろう打順を考えてのことである。
ところが、ネクストバッターズサークルに出てきたのは、斎藤ではなかった。ヘルメットをかぶってバットを振っていたのは、マイカ・ホフパワー。確かに斎藤 は3回までに8本ものヒットを打たれている。毎回、1点ずつを失っていたものの、いつものように試合を壊してしまう一本は許していない。まさか、栗山英樹監督は、もう斎藤を代えるつもりなのだろうか――。
5月31日に神宮球場で行なわれた、スワローズとファイターズとの交流戦。
4試合ぶりの白星を目指す斎藤にとって、この日のマウンドは、思い入れの深い神宮への"初凱旋"という意味合いもあった。早実時代、夏を制覇した甲子園を彼の"第一の聖地"とするならば、早大時代、通算31勝を挙げ、優勝の喜びを何度も味わった神宮は、いわば"第二の聖地"。だからこそ、神宮の空気が斎藤の心を洗い、5月の最後を締めるのに相応しい、ピッチングを見せてくれるのではないか――誰よりもそんな期待を胸に秘めていたのは、じつはファイターズの指揮官だったはずだ。
栗山監督は、スポーツキャスターとして高校、大学時代の斎藤をつぶさに見つめてきた。斎藤も取材者としての栗山に信頼を寄せ、思いの丈を吐露(とろ)してきた。そんな栗山が監督となって、ふたりの距離感の取り方は難しくなった。栗山がこの春のキャンプのとき、斎藤についてこう話していたことがある。
「初めてインタビューした高校生が、斎藤佑樹だったんだよね。そういう意味では、縁を感じているし、だからこそ佑樹に関しては口では厳しいことばかり言ってる。でも口で言うのと心の中は違っていて、それは佑樹だけじゃなくて中田翔にしてもそうなんだけど、みんなが注目する甲子園で育った選手たちのことは、野球界のために、ファンのために、もうワンランク上のステージに上げないといけないと思っています。それが自分の責任だし、そのためにオレは彼らにそれだけ の場所を用意する。そこで結果を出してもらわなくちゃいけないんだから、当然、彼らには頑張ってもらわなくちゃいけないし、それだけ厳しくもなるよね」
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