【プロ野球】栗山監督が行なった荒療治で斎藤佑樹は覚醒するか? (3ページ目)
実際、斎藤は小走りにダグアウトへ戻った。もちろん、4回裏の攻撃が9番の斎藤から始まるからだ。スワローズの攻撃を3人できっちり抑えて、ランナーもいないイニングの先頭バッターによもや代打もあるまい。当然の如く、斎藤はベンチに座って右ヒジにまくエルボーガードを用意し、打席に入る準備をしていた。 そのときの斎藤の様子を、テレビカメラがずっと捉えていた。
すでにベンチを出ていた栗山監督に、斎藤は気づいていなかった。
代打、ホフパワー。
グラウンドではホフパワーがヘルメットをかぶり、ウエイトリングをつけたバットをブンブン、振っている。斎藤はその姿にも気づかない。ベンチの隅の先発ピッチャーが座るいつもの指定席で、打席に入る準備を続けている。
ふと、斎藤がグラウンドに視線を向けた。
ホフパワーの姿が目に入る。
あれっ、まさか……栗山監督を目で追い、目が泳いだ。そして、何やら呟く。
「ウソだ……」
画面を見る限り、そう言っているように見えた。それでも斎藤は、そう呟いてからもなお、エルボーガードを右ヒジに巻く作業を続けた。
斎藤の意地だ。
やがて、バッテリーコーチを兼任する中嶋聡が斎藤に歩み寄る。斎藤が切り出した。
「交代?」
中嶋コーチは頷き、斎藤の肩を叩く。その直後、吉井理人ピッチングコーチが斎藤に交代を告げた。
心がざわつく。
斎藤の震えが伝わってくる。
2度、顔をしかめて珍しく悔しさを露わにした斎藤は、しばし呆然としていた。そして下を向き、目をつぶった――。
わずか3回、たったの54球で降板。
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