【プロ野球】決意のストレートで勝負の3年目に懸ける阪神・秋山拓巳 (2ページ目)
やさしい顔をしているわりに、中は「とんがったヤツ」だった。
愛媛・西条高2年の2月、初めての甲子園を目前に控えて、センバツに賭ける思いは格別と感じた。
「甲子園でいいピッチングして、プロに認められたいですから。はい、100%プロ志望ですから。えっ、バッター? いえ、200%ピッチャーです!」
城跡の学校。四周をお堀に囲まれて、教室の授業の様子を外から眺めると、生徒全員が教壇に向かっている。愛媛の名門校のひとつだ。てっきり、「進学」と決めつけていた。
甲子園に出るまでは、「超高校級スラッガー」としての名声のほうが高かった。そっちのほうも、きっと迷っているんだろうなぁと、こっちが勝手に思い込んでいた。
「自分、太りやすくて......両親も気遣ってくれて、いろいろやってくれるんですけど、なかなか絞れなくて......。今、『キャベツ・ダイエット』やってます」
夕飯の前に、大きなボール一杯のキャベツの刻んだヤツをまず腹に入れて、そこから「通常の夕食」が始まる。食べ盛り、伸び盛りの17歳に、それは聞くも涙、語るも涙のものがたりであった。
3月の寒い日の夕暮れ。
手に息吹きかけながら、それでも右打者の外角低めに、140キロ前半を9球続けて決めてみせた。
「200%ピッチャー」の意地をこちらのミットに叩きつけ、春、夏の甲子園でも、マウンドで熱い思いをほとばしらせて奮闘した。
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