【プロ野球】野村祐輔が見せた、はじめての弱気な姿 (2ページ目)
そりゃあ、無理もない。プロに入って、「悪いもの」をずいぶん見てきたのだろう。
自分より速いボール、自分より強いボール、自分より鋭い変化球。自分と同じぐらいのコントロールだって、一軍投手ならみんな持っている。
今日も彼の右隣りでは、若きエース・前田健太が快速球に始まり、新兵器・スライダーに必殺・マエケンカーブ。持ち球すべてを投げ、「エース」であることを主張するかのような熱投を見せていた。
「大丈夫。野村くんは実戦のマウンドに行ってはじめて光るピッチャーじゃないか。バッターにチェンジアップ投げるようになってからが、ほんとの勝負なんだから」
中肉中背、ビックリするようなスピードがあるわけじゃないし、フォームだって品よく丹精だ。はたから見れば、ブルペンじゃ目立たないタイプだろう。
それに、なんたって「なんでも一番になりたい投手」の矜持がそれを許さないだろう。
二塁けん制の練習。野村のけん制動作のスピードに、プロの内野手がついていけない。すると、内野手のスピードに彼の方が合わせるようにした。
それはどうなんだ?
せっかくの財産を、自ら放棄することになっていないか。
今までずっと「てっぺん」でやって来た。
そして今、「一番下」になった。
野球のレベルに戸惑い、環境の変化に戸惑ってしまう。これはすべての「エース」たちが踏み越えてきた道。でも、「なんでも一番」を目指してきた野村のことだから、きっと乗り越えていくに違いない。
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