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大谷翔平がスーパースターの地位を確立しても、なぜMLBで二刀流選手が出てこないのか?  (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

【「二刀流選手」の認定基準が足かせに?】

 球団の立場も理解できないわけではない。400万ドル(約6億4000万円)の契約金を払った金の卵で、二刀流は肉体的にも精神的にも負担が大きく、いずれかに専念させたほうが成長も早く、故障リスクも管理しやすい。おそらくカグリオーンもマクリーンも、同じような理由だったのだろう。だがエルドリッジの言葉は、ひとつの事実を示していた。大谷に憧れ、二刀流を夢見る若者たちは確かに存在する。問題は、その夢を持った選手たちが、プロ入り後も二刀流を続けられる環境が用意されていないことなのだ。

 大きな障壁は、2020年に導入された「二刀流選手」の認定基準である。現在のMLBで二刀流選手として認定されるには、メジャーリーグで1シーズンに投手として20イニング以上登板し、さらに野手または指名打者(DH)として20試合以上先発出場し、それぞれの試合で3打席以上立たなければならない。一見、合理的な基準に見える。しかしながら、その条件を満たすまでの道筋はほとんど存在しない。

 例えば、まず野手としてメジャーロースター入りした選手を考えてみよう。その選手がマウンドに上がれるのは、延長戦や大差の試合など限られた場面だけ。そこで20イニング以上を積み重ねるのは現実的ではない。

 では、逆に投手として登録された場合はどうか。今度は20試合以上、野手またはDHとして先発出場しなければならない。しかしそのためには、チームは貴重な投手枠をひとつ使いながら、その選手を野手としても起用し続けなければならない。優勝を争うチームであればなおさら難しい。球団からすれば、「そこまでして二刀流を試す必要があるのか」という結論に至る。

 皮肉なのは、MLBがこの制度を導入した際には「二刀流選手を増やしたい」と説明していたことだ。しかし実際には、この制度は、すでに二刀流として成功した選手を認定する仕組みであって、二刀流選手を育てる仕組みではない。エルドリッジのような若い選手に必要なのは、二刀流に挑戦する過程を保護し、球団が安心して試せる環境を作ることである。現在の制度には、その発想が決定的に欠けている。そしてそれはとてももったいない。

後編につづく:大谷翔平が生み出した二刀流の価値を「唯一無二」で終わらせてしまっていいのか?

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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