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大谷翔平&デコピンを描いた壁画アーティストの思い 「ドジャースと、大谷と、コービーとロサンゼルス」 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【"本物のロサンゼルスの壁画"らしさを出せた】

新たな巨大壁画にはデコピンの姿も photo by Okuda Hideki新たな巨大壁画にはデコピンの姿も photo by Okuda Hideki
――なぜ今回はデコピンも描いたんですか?

ゼルメーニョ「正直に言うと、ずっと前からデコピンを描きたいと思っていたんです。何度かほかのクライアントに提案したんですが、実現しなかった。でも今回のオーナーは『いいアイデアだ』と賛成してくれて。

 それに僕自身、大の犬好きなんです。生まれてからずっと犬と一緒に暮らしてきました。人にとって犬やペットは家族同然。しかも"大谷のMVP(Most Valuable Puppy最も価値ある子犬)"みたいに、SNSでもネタになっていたのを見て『これはいい!』と思ったんです。だから今回描けてうれしかったですし、オーナーも僕と同じくらい喜んでくれました。そして実際に完成したら、ファンからもすごく高評価。壁画を見に来て『あれ、デコピンもいる!』と驚いてくれる。その反応を見るのが楽しいんです。"サプライズ要素"が温かい気持ちを与えてくれる。僕が狙ったとおりの反応をしてくれていて、本当にうれしいです」

――去年はドジャースが"大谷&デコピン"のボブルヘッドデーをやっていましたよね?

ゼルメーニョ「僕は行けなかったんです。ああいうボブルヘッドを手に入れるには、球場に開場の5時間くらい前から並ばないといけない。僕はいつも仕事があるので、ダウンタウンまで行くのが大変なんです。交通渋滞もひどいですしね。もちろん試合を観に行くのは大好きですが、ああいう特別イベントはなかなか難しいんです」

――この壁画に使った大谷の元の写真は、どの試合のものかわかりますか?

ゼルメーニョ「正直、どの試合かはわからないんです。ただその写真を見て気に入りました。大谷が見上げていて、自信に満ちている表情。おそらくホームランを打って、それを見届けている瞬間だと思います。少し笑っているようでもあるし、同時に集中している。堂々として"今、俺はホームランを打ったんだ。どうだ"といわんばかりのポーズで、とても力強く感じました。周りでは観客が叫んでいても、彼は落ち着き自信に満ちている。その雰囲気が好きでした」。

――仕上がった壁画を見た人々の反応はどうでしたか?

ゼルメーニョ「みんなすごく気に入ってくれています。ポジティブなフィードバックをたくさんもらっています。やっぱりこの街の人はみんなドジャースが大好きですからね。色使いも工夫しましたし、レドンドビーチの要素も取り入れました。構図としても、単なる野球の絵を超えて"本物のロサンゼルスの壁画"らしさを出せたと思います。それが僕の狙いでした。野球やバスケットボールに興味がない人でも楽しめるようにしたかったんです。デコピンを加えたのもそのためで、かわいらしい要素があることで、地域の人たちにとってもっと普遍的に親しみやすい作品になると思ったんです」

――夕方は夕日に映えて特にきれいですね。ロサンゼルスの夕日が世界一だと思いますか?

ゼルメーニョ「思いますね。僕は自分の時間の99%をロサンゼルスで過ごしていますが、全米を旅したこともあり、いい夕日を見てきました。でもここの夕日は特別です。大気のスモッグが原因かもしれませんが、ピンクや紫がとても鮮やかで、街全体がその色に染まる瞬間があります。車や地面に反射して、世界がピンクと紫に包まれるんです。あの光景は本当に最高です」

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