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【MLB】メジャー4年目で開眼した鈴木誠也 カブス番記者は「打つべきカウントで、打つべき球に手を出している」

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

好調の鈴木はカブス躍進の大きな原動力になっている photo by Getty Images好調の鈴木はカブス躍進の大きな原動力になっている photo by Getty Images

後編:鈴木誠也、メジャー4年目の開眼

 鈴木誠也(シカゴ・カブス)の"4年目の開眼"の原因を探る連続インタビュー。後半はスポーツメディア『The Athletic』の番記者であるサハデフ・シャーマ氏に話を聞いた。メジャーでのルーキーシーズンから鈴木を取材してきたシャーマ記者は、鈴木の打撃アプローチとともに、コミュニケーションの変化も感じているという。

 それと同時に、現時点でナ・リーグ中地区首位に立っているカブスの躍進に少々驚かされているというベテラン記者に、このチームの今後の可能性についても語ってもらった。

【「積極性を適切な形で発揮できている」】

 ハイペースで打点を稼いでいる誠也は、今くらいのレベルで活躍するだけのポテンシャルは常に秘めていたと思う。メジャーでのルーキーシーズンの終盤や、健康に過ごしている時期の一定期間など、その片鱗を垣間見せてきた。オフェンス面での能力が高いことは、誰の目にも明らかだった。

 今季の誠也の活躍は、カイル・タッカーの加入、PCA(ピート・クロウ・アームストロング)の成長などでカブス打線の層が非常に厚くなったこともあり、プレッシャーが軽減されたことが好影響を与えたことは間違いない。ダスティン・ケリー打撃コーチが述べているとおり、新加入のタッカーから打者に有利なカウントで積極的に打つことの大切さを学んでいる部分もあるのだろう。

 今季の誠也は四球が減った一方でパワーが飛躍的に向上している。打球をより遠くに飛ばそうと努めているように見える。打つべき球を選んでスイングし、空振りはそれほど多くはない。しっかりとコンタクトし、バットのバレル(長打になる確率が高いとされている打球の速度と角度の組み合わせを示す指標)で打球を捉え、力強く打ち上げている。現代のメジャーでフロントオフィスが望む要素を数多く備えた打者として確立されてきたように見える。

"打席でより積極的になったことが功を奏している"というのも、ケリー打撃コーチが話しているとおりだと思う。さらに突っ込んで話しておくと、誠也はその積極性を適切な形で発揮できているのが大きい。

 打撃のアプローチが変わっても、誠也自身が変わったわけではない。「もっとアグレッシブに」と指示すると、どんな状況でもとにかく初球にスイングしてしまう打者もいるが、聡明な誠也はそうではない。打つべきカウントで、打つべき球に手を出している。シンプルに聞こえるかもしれないが、これまでと違った方法で成功している誠也は評価されてしかるべきだ。

 私はメジャーでの1年目から誠也を取材してきたが、過去数年と比べ、クラブハウスで接する彼はよりリラックスしているように感じられる。もともとジョークを言うことを好む選手だったが、以前は自身が取り組んでいることについて説明することには消極的だったように思う。それが現在ではいいことであれ、悪いことであれ、どのように結果に至ったかを細かく話してくれるようになった。4年目を迎え、アメリカでも実績を残し、さまざまな意味でより快適に感じられるようになったがゆえのことなのだろう。

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著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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