【MLB】菅野智之がメジャーデビュー数カ月でトレード? 計算できるピッチングに他球団からのラブコールも少なくない (3ページ目)
【ダルビッシュ有や菊池雄星のように】
一方、ドジャース以外の球団は、買い手に回った場合、ほぼすべてが移籍先の候補になり得る。
たとえば、ドジャースと同じナ・リーグ西地区のサンディエゴ・パドレスの先発投手は、ダルビッシュ有が復帰して、ようやく5人が揃う。前年に韓国プロ野球で崔東原賞(最優秀投手賞)を受賞したカイル・ハートは、5登板で防御率6.00を記録して4月下旬にAAAへ降格した。同地区のサンフランシスコ・ジャイアンツも5人中ふたりの防御率が5.00を超えている。
また、ニューヨーク・ヤンキースでは、エースのゲリット・コールがトミー・ジョン手術でシーズン全休となり、前年に新人王を受賞したルイス・ヒールも肩の故障で開幕を迎えていない。
シカゴ・カブスも、ジャスティン・スティールが左ひじ手術で早々にシーズンを終えている。スティールは日本開幕シリーズで今永昇太に続いて2試合目に登板した。実績からしても、カブスは今永とともに二本柱を形成することを期待していたはずだ。
今から2年前、藤浪晋太郎(現シアトル・マリナーズ)は夏のトレードでオークランド・アスレチックスからオリオールズへ移籍した。当時の藤浪と現在の菅野は、どちらもメジャーリーグ1年目。1年契約で入団したことも共通する。
ただ、4月を終える前に、藤浪はローテーションから外され、ブルペンに回った。
むしろ、菅野がたどるかもしれないのは、2017年のダルビッシュや昨シーズンの菊池雄星(現エンゼルス)と同じ道だ。先発投手のふたりは夏のトレードで、それぞれテキサス・レンジャーズからドジャース、トロント・ブルージェイズからヒューストン・アストロズへ移籍した。
当時、ダルビッシュは6年5600万ドル(2012年〜2017年)、菊池は3年3600万ドル(2022年〜2024年)の契約最終年だった。ダルビッシュは移籍前の防御率4.01に対し、移籍後は防御率3.44。菊池の防御率は4.75→2.70と推移した。菊池がいなければ、アストロズは地区優勝を逃していた可能性もある。
前年まで巨人ひと筋に投げてきた菅野が、メジャーリーグ1年目の途中に優勝請負人として新天地へ移り、その期待に応えるというのは、開幕前にはなかった魅力的なシナリオのように思える。もちろん、オリオールズがここから浮上し、菅野が移籍せずにエースとして投げ続けるシナリオも捨てがたいのだが......。
著者プロフィール
宇根夏樹 (うね・なつき)
ベースボール・ライター。1968年生まれ。三重県出身。MLB専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランス。著書『MLB人類学──名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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