メジャー昇格を目指し2Aで奮闘中の23歳・西田陸浮 2023年ドラフト11巡指名までの道のり (2ページ目)
【自身の情報をSNSに投稿しメジャー校へ】
2020年夏、アメリア北西部・オレゴン州にあるマウントフッドコミュニティーカレッジ(短大)野球部の練習場に立った西田は、呆然とした。
「練習場所がコンクリートでした。草もぼうぼうに生えていて、雨が多い地域なのに室内練習場もありませんでした。ケイジのネットもだらんと垂れ下がっていて、壊れていました」
宮城県の名門・東北高校で1年生からレギュラーだった西田は、日本の大学には進学せず、まずはアメリカの短大で2年野球をプレーし、それで無理ならば、その後は経営者になると心に決めて渡米した。
ところが、出鼻をくじかれた。「だから、ずっとボールをイメージして、ひとりで毎日1000回素振りをしていました」。
西田の素振りは、最初の500回はトレーニング、あとの300回は形を整え、最後の200回は「逆ぶりをしたり」の応用。「イメージもするので見逃しもあります。たまにボールが来るので手が止まったりもする」。それを大晦日も正月もずっとやり続けた。東北高校時代から自主練として行なっていた習慣だったため、苦にはならなかった。
そんな日々のなか、自らの連絡先をつけたSNSアカウントに打撃動画と守備動画、成績も載せて投稿すると、全米大学体育協会(NCAA)1部(以降D1)の約15校からオファーを得た。そのなかのひとつが、西田が進学先に決めたオレゴン大だった。アメリカの大学で有数のハイメジャーカンファレンス"Pacific -12(Pac-12)"に属する(現在は同じハイメジャーのビッグテン・カンファレンス所属)名門校だが、「緑かなと思って(笑)」と大学のカラーが気に入ったことを挙げた。
短大の2年間では91試合に出場して打率.383、54打点、100得点、91盗塁をマーク。結局1年の在学となったオレゴン大では63試合に出場して打率.312、37打点。25盗塁は58年間破られることのなかった同大の1シーズンにおける最多盗塁記録となった。ポストシーズンでは、同大のカンファレンス・トーナメント優勝に貢献し、全米で64チームだけが戦える"リージョナル"に出場。強敵バンダービルト大がホストとなったナッシュビル・リージョナルでは打率5割を記録して、オレゴン大が11年ぶりに16強の戦い "スーパーリージョナル"に進出する立役者となり、同リージョナルのMVPに選ばれた。
あと1勝というところで "カレッジワールドシリーズ"進出を逃し、「来年もう一回大学でやろうかなと思った」というほど悔いが残っていたようだが、プロ入りの意思を変えることはなく、現在に至っている。
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