【MLB】米ベテラン記者が見るドジャース・佐々木朗希への期待と課題 「スプリットは、この世のものではないが......」
東京での開幕シリーズ第2戦の先発が決定したドジャース・佐々木 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
「令和の怪物」のMLBデビューが近づいてきた。
千葉ロッテからポスティングシステムを通じてロサンゼルス・ドジャース入りした佐々木朗希は、スプリングトレーニング、オープン戦を通じて順調な調整を継続。オープン戦では通算7イニングで無失点という好投が評価され、当初からの青写真どおり3月19日、東京ドームで行なわれるシカゴ・カブスとの開幕シリーズ第2戦での先発が決まった。23歳の右腕が、いよいよ新たな一歩を踏み出すことになる。
佐々木への注目度は、アメリカ国内でも高い。スポーツ専門媒体・ESPN.comの看板ライター、ジェフ・パッサン記者もその一挙一動に目を光らせているひとりだ。佐々木が2試合連続完全試合の寸前に迫った2022年、筆者はパッサン記者に訪日取材の可能性について助言を求められたことがあったが、それ以降も大御所ライターの興味は、佐々木に注がれてきた。
そして今年、佐々木がシンシナティ・レッズ戦でオープン戦初登板を飾った3月5日、スタジアムの記者席にはパッサン記者の姿があった。
それほどの長期にわたって佐々木を追いかけて来たパッサン記者に3月中旬、日本が生んだ豪腕の現在地、ポテンシャル、今季の予想成績について話を聞いた。メジャーでもトップレベルと目される佐々木の才能の素晴らしさを依然として認めつつ、パッサン記者は精神面が課題になると見ているようだった。
*以下、パッサン記者のひとり語り
【リーグ最高級のスプリットと指摘する懸念材料】
初めに最大の武器の話からしておくと、ロウキが投げるスプリット(フォークボール)はほとんどこの世のものとは思えないということ。私が一番感銘を受けたのは、その動きの激しさだ。通常、右投手のスプリットは右打者に対しては内側に、左打者に対しては外側に動くのだが、彼のスプリットはスライダーのように見える(通常のスプリットとは逆側に動くこと)ものもいくつかあった。カットの動きをするスプリットは、なかなか見られるものではない。あらゆる方向へ動くゆえに予測不可能で、メジャーリーグのレベルでもすばらしい球種になる可能性を十分に秘めている。
スプリットは開幕当初から球界最高級の球種になることは予想できるので、ロウキの成功は速球を投げる時に球速を保てるか、ストライクを狙って投げられるかどうかにかかっていると思う。速球でしっかりとストライクを取れれば大きいし、スプリットでもストライクを稼ぐ一方、ストライクゾーンの下にも投げて空振りも取れるのであれば、攻略するのは本当に難しい投手になるだろう。
ただ、現在のロウキにはまだ少なからず懸念材料はある。2年前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝で先発したことは、ロウキが大舞台での登板を望んでいることを示したことでもあった。それから2年の経験を積んできたわけだが、WBCの登板時と比べると、速球の球速が落ちている。彼にとって最も重要なのはかつての速球を取り戻すことであり、現在はその途上にいると言える。これからもその部分は継続的に取り組んでいかなければならない。
また、ロウキはまだ23歳であり、過去に感情をコントロールすることに問題があったことも忘れてはいけない。今後、どれだけ活躍できるかは、彼の精神力に大きく左右されると思う。ドジャースにとっては、その面でどうサポートしていくかが課題でもある。
ロウキを精神的に安定させるために、ドジャースは何をしていくべきか。ドジャースは投手の能力を引き出すことには定評があるが、ロウキの育成の際には彼の精神状態を身体の状態と一致させられるのかどうか。
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著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう