「それだけ長くやってきて、よくそんなこと聞きますね」 担当記者が今も忘れないイチローから浴びせられた強烈なひと言 (3ページ目)
イチローがスランプに陥る原因で最も多いのは、ボールをよく見ようとしすぎて始動が遅れるケースだ。しかしあの時の自分は始動前のカタチ、すなわち打撃フォームの違いばかりに気をとられていた。視野の狭さを反省したと同時に、オリックス担当1年目の、あの気まずい初夏の夜を思い返した。
それなりに長い時間をともにし、ある程度お互いをわかるようになったとしても、彼は取材者との間の生温い空気を許してくれない。しかし見方を変えれば、取材対象がそれだけ本気でこちらの相手をしてくれている、ということでもある。そもそも、あの独特の緊張感があったからこそ、ここまで長く続けられているのだと思う。
(文中敬称略)
著者プロフィール
小西慶三 (こにし・けいぞう)
1966年大阪府生まれ。関西学院大学卒業後、1991年に共同通信社入社。1994年からオリックス・ブルーウェーブ(当時)を担当し、本格的に野球記者のキャリアをスタートする。その後、西武ライオンズ担当などを経て2000年12月、米ワシントン州シアトルに転勤。2001年に全米野球記者協会(BBWAA)初の日本人会員となる。イチロー氏の現役時代はオープン戦などを含め年間平均200試合近くを現場で取材。現在もシアトルを拠点にMLB取材を続けている
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