「大谷翔平のバッティングは真似るべきではない」 名コーチ・伊勢孝夫が野球少年に警鐘を鳴らす理由 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

【野球少年が真似すべき選手は?】

 少し前だが、大谷がクリケットのラケットを使って練習していたと報じられたことがあった。珍しいことのように取り上げられていたが、以前、私が近鉄かヤクルトでコーチをしていた頃、それに似た形の特注バットをつくってもらい、バッティング練習をしたことがあった。

 その目的は、面で打つ意識を養うためだ。面を意識できれば、手首が早く返ってしまうのを防ぎ、スピンの効いた打球を打てる。こうした練習は、アマチュア選手が参考にしてもいいかもしれない。

 私は今、大阪観光大で打撃指導をしているのだが、学生にはよく「品のある打球を打ちなさい」と言っている。金属バットで育った選手は、どうしても手首が早く返ってしまう傾向が強く、回転の悪い打球になってしまいがちである。それを私は「品のない打球」と呼び、きれいなスピンの効いた打球を「品のある打球」と言っている。大谷がホームランを量産できるのも、この「品のある打球」を打てるからだ。

 手首を返さない練習法はアマチュア選手や野球少年たちも参考にしてほしいが、先述したように大谷のバッティングフォームは手本にすべきではない。では、どの選手のバッティングを参考にすればいいのかと言えば、私は吉田正尚(レッドソックス)を挙げたい。

 吉田も筋力トレーニングを積極的に行ない、抜群のスイングスピードを誇るが、大谷ほど上半身の力に頼った打ち方をしているわけではない。吉田の場合は、スイングスピードの速さを生かし、じっくりボールを見極め、コースに逆らわないバッティングができる。

 吉田については、青山学院大の4年時から見る機会があったが、スイングスピードは当時から速かった。それはオリックス入団後も変わらず、軽く振っているようで遠くに飛ばせるのは、下半身から上半身にしっかり力を伝えられているから。タイミングがドンピシャで合ったときの打球はすばらしいのひと言だ。ぜひ、子どもたちに見習ってほしいスイングだ。

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