韓国の大谷翔平ファンクラブ会長にインタビュー 「同じポルシェまで購入しました」 (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【韓国で有名な大谷のストーリー】

 開設後は大きな批判は起きていないという。大谷のポジティブな姿が韓国にも大々的に伝わっていっているからだ。

 2023年WBCでの「憧れるのをやめましょう」スピーチはつとに有名で、韓国での「大谷像」をさらにポジティブにするきっかけになった。また試合中にサッとゴミを拾う姿も広く伝わっている。イ氏は個人的に「チームのためにセーフティーバントまでもやりきれること」がすばらしいと感じている。

 もうひとつ、韓国で有名な大谷のストーリーがあるという。

「あれだけお金を稼いでいても、ご家族がそれに頼らずに暮らしていることです。それぞれが仕事をしていると聞きます。韓国ではこの姿がすごくリスペクトされているんですよ。多くの場合、子どもが大成功したら親はそのお金に頼るものでしょう? 僕が彼の父親だったとしても100億ウォン(10億円)くらいもらって、あとは悠々自適に暮らすと思いますよ」

 昨シーズン後、大谷の移籍先があれこれと噂された時期は、イ氏にとっても気を揉む時期だった。そしてドジャースに決まったというニュースが報じられた時、ホッとした。

「西海岸のチームでよかったと思います。僕にとっては韓国との時差が重要な問題でしたから。東海岸のチームだとより時差が大きくなる。僕はできる限り全試合をライブで見たいので、仕事の時間帯を大きく変える覚悟もしていましたから」

 MLB開幕戦はコチョク・スカイドームで観戦する予定だ。いくら自身がファンクラブ会長だからといっても、発売日にプラチナチケットを手にすることはできなかった。徹夜で予約サイトの応募ボタンをクリックしたがダメ。しかし翌日、2枚チケットを入手したファンクラブ会員が「一緒に行きましょう」と申し出てくれた。自分がお代を2枚分支払って恩返しとし、同席させもらうことにした。

「もちろんホームランに期待したいですよ。でもリハビリ明けの状況なので、あまり無理してほしくはないなという気持ちがあります。何よりも強いチームでの大谷選手が見られることがまず楽しみです。昨季のエンゼルスの試合はすべて見ましたが、大谷選手とチームメイトの実力差があり、彼がかわいそうな面もありました。だから前後の打者もいい選手が多い打線で大谷選手がどう輝くのか。そこを見てみたい気持ちがありますね」
(おわり)

著者プロフィール

  • 吉崎エイジーニョ

    吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)

    ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。

【写真】大谷翔平フォトギャラリー SHOW TIME!

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