メジャーの新ルール「ピッチクロック」でどう変わる? サイ・ヤング賞右腕は「投手がテンポを支配できるようになった」と歓迎 (3ページ目)
しかしながら、打者も打席のなかでタイムをとることが1回までとなったため、自分の「間(ま)」をとることが難しくなるかもしれない。打席に入るまでの時間や、登場曲の時間にも制限が設けられたため、打者自身も適応が求められる。
過去にサイ・ヤング賞を3回獲得したメッツのマックス・シャーザーは、2月のオープン戦からグラブにタイマーを装着し、テンポに緩急をつけながら打者と対峙し、新シーズンに向けて実験を行なってきた。
「この新ルールで、投手が完全にテンポを支配できるようになったんだ。僕にとっては非常に有利な変更だと思うね。打者と投手の力関係を根本的に変えるものになるかもしれないよ」(シャーザー)
投手と打者、そして走者。新たな時間のルールができたことで、よりスピーディーなベースボールへと各選手が順応していくことが求められている。そして大げさでなく、新ルールに順応した選手、チームが今年のワールドシリーズを制するのかもしれない。
そして、このスピーディーな試合展開に慣れなければならないのは選手だけではない。リグレー・フィールドのスタンドでビールを売るキースさんは、その試合運びの速さに驚きを隠せない様子だった。
「ここでビールを売って25年になるけど、あっという間に試合が終わっていたよ。こりゃ今年は初回からどんどん売らないといけないね」
選手だけでなく多くのスタッフやファンによって成り立つベースボールという文化。MLBの思惑どおり、このルール変更による試合時間の短縮で新たなファンを獲得することができるだろうか。
著者プロフィール
Saku Yanagawa (サク・ヤナガワ)
アメリカ・シカゴを拠点にするスタンダップコメディアン。2021年経済誌『フォーブス』の選ぶ「世界を変える30歳以下の30人」に選出。年間50試合以上をスタジアムで観戦するほどのシカゴ・カブス・ファン。
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