メジャーの新ルール「ピッチクロック」でどう変わる? サイ・ヤング賞右腕は「投手がテンポを支配できるようになった」と歓迎
3月30日、MLBの2023年シーズンが開幕した。1968年以来、じつに55年ぶりに全30チームが試合を行なったオープニングデイ。シカゴ在住で年間40試合以上をスタンドで観戦するカブスファンの筆者は、今年もこの日、本拠地リグレー・フィールドを訪れた。
この日の気温は8度。それに加えてシカゴ名物でもあるミシガン湖からの冷たい風が吹きつけたが、3万6054人が詰めかけた満員のスタンドは試合前から寒さを感じさせないほどの熱気で満ちていた。
ピッチクロック違反者第1号となったカブスのマーカス・ストローマンこの記事に関連する写真を見る
【違反者第1号はストローマン】
試合は開幕投手を務めたマーカス・ストローマンがミルウォーキー・ブリュワーズ打線を6回無失点に封じ、カブスが勝利を収めた。そして、この日の勝利投手となったストローマンは、2023年MLBが導入した新ルール「ピッチクロック」の違反第1号となった。
今シーズンから導入された新ルール、ピッチクロック。MLBが昨年9月に、試合時間短縮を目指し、今シーズンからの導入を決定した。ピッチャーの投球間隔に時間制限を設けるこのルールは、すでにマイナーリーグで2022年に導入され、平均試合時間を26分間短縮することに成功した。
ちなみに、昨シーズンのMLBの1試合あたりの平均時間は3時間3分。アメリカ国内で若い世代、とりわけZ世代のファン離れが叫ばれるなか、より集中力の続くタイトな試合時間を目指すMLBの思惑は実現するのだろうか。
まずは具体的な変更内容を見ていきたい。
ピッチャーはボールを受けてから、ランナーがいない場合は15秒、ランナーがいる場合は20秒以内に投球モーションに入らなければならず、それを超えた場合は1球のボールがペナルティとして与えられる。
リグレー・フィールドでは、新たにスコアボードの下にタイマーが設置され、観客にも可視化される形でカウントダウンが行なわれた。また、投手の制限時間に基づき、キャッチャーも残り9秒までに、捕球体勢をとることが定められている。打者も残り8秒までに構えをとる必要があり、できなければ1ストライクが与えられる。
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プロフィール
Saku Yanagawa (サク・ヤナガワ)
アメリカ・シカゴを拠点にするスタンダップコメディアン。2021年経済誌『フォーブス』の選ぶ「世界を変える30歳以下の30人」に選出。年間50試合以上をスタジアムで観戦するほどのシカゴ・カブス・ファン。