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若手投手に学ぶダルビッシュの「謙虚さ」と「貪欲さ」。2ケタ奪三振試合歴代1位の偉業も目前に (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/アフロ

 7月22日のニューヨーク・メッツ戦もそれを象徴していた。今季は平均7%しか使っていないスプリットを、この日は全99球中14球と多投(約14%)。9つの奪三振のうち、6つをスプリットで奪うなど"無双"の決め球となった。試合後、シーズン後半戦の初戦でスプリットの割合が多くなった理由を問われると、興味深いエピソードを披露した。
 
「たまたま昨日、アマゾンでキンドルの本を見ている時に、佐々木朗希選手が表紙の『週刊ベースボール』があって。それが落ちる球の特集だったんですよ。『これは今、自分に必要だ』と思って買いました。佐々木投手のフォークの話、大谷選手や山本由伸投手の話、岩隈久志さんのレクチャーの記事とかもあって、すごく参考になりました。それで今日、よかったんだと思います」

 渡米以降、サイ・ヤング賞の投票で3度もトップ10入りするほどの実績を残しながら、年齢的にひとまわりも下の投手たちの投球を参考にするピッチャーがどれだけいるだろうか。ダルビッシュの長期に渡る成功は、こういった謙虚さ、貪欲さがあってこそだろう。

 ここまでは三振の話が多くなったが、今季のダルビッシュは長いイニングを稼ぐことができているのも特徴だ。勝利した10試合でも8戦で7イニング以上を投げている。先発投手の負担が減少傾向にあるメジャーリーグに相反する数字だ。

「球数がかかっちゃった打者とか、三振をとるのに5、6球くらいかかった打者の次(のバッター)は、なるべく2球くらいで打たせたい。常に球数を見ながら、このバッターはどこに投げたらインプレーに打ってくれるだとか、どの球種が一番アウトになりやすいかは、ある程度は頭に入っています」

 世界最高のリーグにおいて、そんなことを涼しい顔でやり遂げてしまう。現在のダルビッシュはまるでピッチングの"職人"のようだ。テキサス・レンジャーズ 、ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブス、パドレスと4球団をわたり歩き、経験に裏打ちされた技術に磨きをかけてきた右腕は、キャリアの円熟期にいるのだろう。

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