マリナーズ元スカウトが見た衝撃。「イチローはすべて揃っていた」 (3ページ目)
そしてコルボーンは99年、イチローがマリナーズのスプリングキャンプに2週間、特別参加できるように手配をした。
コルボーンはその2週間が、マリナーズにとって、イチローの才能を見るいいショーケースとなることを密かに願っていた。しかし、腹痛と脱水症状により、イチローは1試合半しか出ることができず、6打席立って、1安打1三振という結果に終わってしまった。
「ルーのイチローに対する印象は、決して芳(かんば)しいものではありませんでした」と、コルボーンは当時の監督であったルー・ピネラの態度を思い出しながら語った。
「イチローが体調を崩してしまったことで、私が知る本来のイチローの姿をルーに見せることができなかった。それはとても残念なことでした。私のやるべき仕事は、マリナーズがイチローに対して興味をもつことだったので、この結果により、イチローが実力不足だと思われたのではないかと心配でした」
しかし、コルボーン自身のイチローに対する評価は揺らぐことはなく、むしろ上がっていく一方であった。
その2週間の間、マリナーズの練習終了後は、元メジャーの投手で、77年にノーヒット・ノーランを達成したことのあるコルボーンが、居残りでイチローの打撃投手を務めていた。
「私にはメジャーリーガー相手に10年間投げてきた経験があり、メジャーリーガーが投球に対してどのような反応をするのか知っています。私にはイチローがいかにいいバッターであるかわかっていたのです。
ある日、アレックス・ロドリゲス(A・ロッド)が私たちの練習している姿を見て、飛び入りで参加してきたことがありましたが、彼と比べてもイチローの方がはるかにいいバッターであると、私は感じました。仮にそれがスプリングキャンプの時期であったとしても、ストライクゾーンに来たすべてのボールをうまく対処するところを見ると、やはりイチローの方が上だということは明らかでした。その時、私はマリナーズ関係者の誰かが歩み寄り、見てくれていたらいいのにと思っていました。
A・ロッドは内角に大きな穴がありましたが、イチローには打ち返せないストライクゾーンの球はひとつもなかったのです。イチローの頭にはすべてのコースの球の軌道や動きがインプットされているのです。今まで私はそのようなバッターを見たことがありませんでした。
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