ジャイアンツ世界一の陰にWBC日本代表の影響あり? (3ページ目)
たしかに2年前を振り返ってみても、ジャイアンツはレギュラーシーズン最少のチーム本塁打(103本)でワールドチャンピンに輝いています。ひと昔前は、強力打線を誇るチームがメジャーを制する時代でした。しかし、ステロイド時代が終焉し、投高打低の傾向が強くなった現在では、パワーだけで世界を制するのは難しくなってきたように感じます。
「パワーの象徴」ともいえるバリー・ボンズ(※)が引退した後、ジャイアンツは本拠地球場の特徴を生かした「投手力と守りで勝つチーム」へと変身しました。その結果、ここ5年間で3度の世界一です。ジャイアンツがナ・リーグ伝統の機動力野球を取り入れるようになったのは、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の影響もあると思います。
※バリー・ボンズ=1993年から2007年までジャイアンツでプレイしたメジャー屈指のスラッガー。2001年にはメジャー歴代最多となるシーズン73本塁打を記録。
WBCの第1回大会(2006年)と第2回大会(2009年)を制したのは、ご存知のとおり日本代表です。パワーの劣っている日本がなぜ世界の強豪国相手に勝てたのか、メジャーリーグの各チームは大いに研究したことでしょう。WBCのような短期決戦では、小技を効かせたスモールベースボールが効果的だということを、日本の野球が教えたのだと思います。
ワールドシリーズという大舞台で、序盤から送りバントをするなど、昔のメジャーリーグでは考えられませんでした。それが今では当たり前のように、小技を効かせた攻撃を仕掛けています。世界一に輝いたジャイアンツや、ワールドシリーズまで駒を進めたロイヤルズの戦いぶりを見ていると、日本代表からの影響は大いにあると改めて感じました。2014年シーズンのメジャーリーグは、「時代の変化を象徴したワールドシリーズ」だったと思います。
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
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