【MLB】最多勝ディッキーのナックルボールはなぜ打てないのか?

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

歴代のナックルボーラーと異なる特徴を持つR.A.ディッキー歴代のナックルボーラーと異なる特徴を持つR.A.ディッキー【前半戦ブレイクした選手たち・投手編】

 あと2週間ほどで前半戦が終了し、オールスターゲームが行なわれます。というわけで今回は、少し早いのですが今シーズンの前半戦を振り返って、特に目立ったふたりのピッチャーを紹介したいと思います。

R.A.ディッキー(ニューヨーク・メッツ)

 まず2012年シーズン前半、全米中に最も衝撃を与えたピッチーは、ニューヨーク・メッツのR.A.ディッキーでしょう。長い下積みを経てようやくブレイクしましたが、もともとディッキーは、1996年にテキサス・レンジャーズからドラフト1巡目で指名された若手有望株だったのです。

 ディッキーは生まれつき右ひじのじん帯がなく、速い球が投げられないため、スプリッター(SFF)を決め球にするピッチャーでした。しかしそれではメジャーに定着することができず、ディッキーは『ナックルボール』を習得すべく、マイナーから再出発します。ところが2006年4月6日、ナックルボーラーとしてメジャーに復帰した試合でメジャーワースト記録に並ぶ1試合6被本塁打と打ち込まれ、再びマイナーへ。2009年までのディッキーは、メジャーとマイナーを何度も往復しながら、メジャーで通算22勝28敗・防御率5.43という平凡な成績しか残せませんでした。

 しかし2010年、転機が訪れます。メッツと契約して5月にメジャーに昇格すると、初のふた桁勝利(11勝9敗)をマーク。ようやく、ナックルボーラーとしての手ごたえをつかみます。さらに2011年も、シーズン終盤に12試合連続でクオリティスタート(6イニング以上3失点以内)を記録し、好調をキープしたまま2012年を迎えました。

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