【MLB】最多勝ディッキーのナックルボールはなぜ打てないのか? (3ページ目)
そして2010年、セールはホワイトソックスからドラフト1巡目13位という高い評価を受けてプロ入りします。すると、マイナーでわずか11試合、計10イニングのリリーフ登板でメジャーに昇格。ドラフトからたった2ヵ月で、メジャーデビューを果たすのです。そしてセールは、ホワイトソックスが優勝を争う中、21試合に登板して2勝1敗4セーブ・防御率1.93をマーク。1年目から素晴らしい成績を残します。
2011年もリリーフで58試合に登板し、2勝2敗8セーブ、71イニングで79奪三振を記録。中継ぎとして期待通りの活躍を見せました。ところが今シーズン、セールは先発への転向を打診されます。完全試合を達成したこともある左腕エースのマーク・バーリーが、昨年オフにFAでマイアミ・マーリンズと契約したからです。セールはその穴を埋めるべく、先発ローテーションの一角を担うことになりました。
開幕当初、セールは先発5番手ぐらいの期待度でした。しかしフタを開けてみると、8勝2敗、そして防御率2.24(現在ア・リーグ1位)をマーク。エース級の大活躍です。198センチの長身から投げ込まれるストレートで三振を量産し、さらにスライダーやチェンジアップも一級品。特に左バッターは、スリークォーターから放たれるボールにまったく手が出ません。
6月22日、対戦相手のミルウォーキー・ブルワーズは、スタメンをほぼ右バッターで揃え、セール攻略を試みました。しかし、それでもセールは8回を無失点と、ブルワーズ打線をシャットアウト。唯一、左バッターでスタメンだった好調の青木宣親選手でさえも、さすがに打てませんでした。最強左腕と呼ばれたランディ・ジョンソンを彷彿とさせる23歳のセールは、後半戦も必見です。
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
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