【MLB】いよいよデビュー。ダルビッシュは野茂を越えられるか?
ダルビッシュは記念すべきメジャー第1球目に、どんな球を投げるのか ついにダルビッシュ有投手が4月9日、メジャーデビューを果たします。本拠地テキサスは、ものすごい盛り上がりを見せることでしょう。というわけで今回は、過去に日本人選手が初先発した日を振り返ってみたいと思います。
まず、過去の日本人初先発で絶対に外せないのが、野茂英雄投手の登板でしょう。野茂投手は1994年オフにメジャー挑戦を表明し、1995年2月にロサンゼルス・ドジャースと契約。しかし当時のメジャーリーグは、アメリカプロスポーツ史上最長(当時)となる232日間に及ぶストライキの真っ最中で、1994年のシーズンは打ち切り、ワールドシリーズも中止になるという危機的状況でした。さらにその影響は95年にも及び、開幕が4月25日までずれ込みました。そんな時代背景のなか、野茂投手はメジャー初先発を果たしたのです。
今でこそ当たり前のように報じられていますが、当時のメジャーリーグは、まさに『夢の世界』でした。5月2日、敵地サンフランシスコでのジャイアンツ戦。その光景は、本当に信じられませんでした。カルフォルニアの青い空の下、日本人ファンが日の丸の旗を振りながら応援するなか、野茂投手がキャンドルスティックパークのマウンドに上がったのです。これには本当に興奮しましたね。1965年、当時ジャイアンツの『マッシー』こと村上雅則投手以来、実に30年ぶり、史上ふたり目となる日本人メジャーリーガー誕生の瞬間です。
その姿は、NHKの衛星放送で生中継されました。過去、ワールドシリーズの生中継はあったものの、レギュラーシーズンの試合が生中継されたことは、かつて一度もありませんでした。まさに初の試み。画期的な出来事だったのです。日本では5月3日の午前4時30分に放送が始まったのですが、NHKのスタジオで現地からの映像を見ながら、村上雅則さんと解説したのをよく覚えています。
強烈に覚えているのが、1回裏に野茂投手が三振を奪ったシーンです。まずはジャイアンツの先頭バッター、ダレン・ルイスを見逃し三振に仕留めました。しかし3番バリー・ボンズ、4番マット・ウィリアムズらに立て続けに3つのフォアボールを与え、ツーアウト満塁に。そんなピンチとなりながら、野茂投手は6番のロイス・クレイトンからまたも三振を奪ったのです。
初回のピンチを切り抜けた野茂投手は、5イニングでわずか1安打無失点、7奪三振でマウンドを降りました。残念ながら味方の援護がなく、勝ち星はつきませんでしたが、申し分ない初先発でした。ちなみにこの試合で唯一、野茂投手からヒットを打ったのが、2番のロビー・トンプソンという選手。彼は現在、シアトル・マリナーズのベンチコーチをしています。キャンプでずっと川崎宗則選手を指導していたので、覚えている人もいるのではないでしょうか。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)