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【高校野球】幻のスクイズ、そして言えなかった「春夏連覇」 大阪桐蔭の主将・黒川虎雅、コーチの肉声で追う敗戦の全貌 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Shiro Tanigami

 9回までの小川の投球を見れば、大阪立命館が得点する姿は想像できなかった。しかし、無死一、二塁から始まるタイブレークは別物である。

「よし、頑張ろう、頑張ろう。しっかりやってきた、やってきた」

 橋本が選手たちに言い聞かせるようにつぶやくと、続けて力強く言った。

「こういう試合に勝っていかな、上には上がっていかれへんからね」

 しかし、したたかな大阪立命館は先頭・西原遼太が三塁線へ絶妙なセーフティーバントを決め、いきなり無死満塁の好機をつくる。9回まで快投を続けた小川でも、タイブレークは別物だった。一死も奪えないまま暴投で勝ち越しを許し、さらに四球。石田は「ちょっとバランス崩してるなあ......」と不安な表情を浮かべた。

 それでも小川は無死満塁から2者連続空振り三振。最後は遊ゴロに打ち取り、追加点を阻止した。1点こそ失ったが、無死満塁の絶体絶命のピンチを切り抜け、再び流れは大阪桐蔭へ傾いたかと思われたが......。

【幻となった同点スクイズ】

 10回裏、無死一、二塁から藤田がきっちりバントを決め、一死二、三塁。打席には、6回にタイムリーを放っている谷渕。

「内野ゴロでええぞ。ゴロでええ」

 橋本が谷渕に語りかけるようにつぶやいたが、その直後、相手ベンチから伝令が飛び出し、申告敬遠。一死満塁となり、打席には7回の守りから入っていた大津昴偉留。

 初球、緩い変化球に空振り。2球目はストレートが外れボール。そして運命の3球目。西谷監督は「1球目を空振りしたのを見て、スクイズのほうが点の入る確率が高いと思った」と試合後に語ったように、ここで勝負に出た。

 相手左腕の変化球に、大津の体がふわりと浮く。当てた打球は、ゆっくりと投手の前へ転がった。

「よっしゃ!」

 橋本が拳を突き上げる。同点となり、次の打者はキャプテンの黒川虎雅。「さあ、サヨナラ!」と思った次の瞬間だった。球審がホームベース前へ勢いよく飛び出し、両腕を顔の前で何度も交差させる。続いて一塁へ向き直り、拳を強く握り締めながら叫んだ。

「アウト! アウト!! アウトッ!!!」

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