【高校野球】0対7からの大逆転、宿敵・帝京撃破、そして涙の初甲子園...小倉全由と「下町の暴れん坊」が起こした夏の奇跡 (3ページ目)
試合は高井から木島への継投が決まり、関東第一が4対3と1点リードのまま終盤へ入った。しかし7回、スクイズを失敗して追加点を奪えなかった。
「あの時は、また勝てないのかと思いました」(小倉)
だが、勝負を決めたのは8回裏だった。関東第一は、満塁から2番・室井和孝が走者一掃の三塁打を放つと、つづく3番・田辺がタイムリー、4番の山本英俊にも本塁打が飛び出すなど、打者一巡の猛攻で一挙8点を奪った。
ベンチの選手全員が飛び出し、帝京ベンチに向かってガッツポーズをするなど、喜びを爆発させた。あまりの盛り上がりに、連盟関係者から「やりすぎだ!」とお叱りを受けたほどだった。
そんなお祭りムードのなか、小倉は「おまえたち、もう1回しっかり守ってこい、高校野球は何があるかわからないから」と必死に冷静を装い、選手たちを送り出した。
そして最終回、2点を許したが12対5で勝利。宿敵・帝京を下して、ついに初めてとなる甲子園出場を決めた。小倉がしみじみと語る。
「あの9回の守備は本当に長かったですね。みんな甲子園に出ることよりも、帝京を倒すことに執念を燃やしていました。それを果たせたことがうれしかった」
スタンドにあいさつに行くと、みんなが泣いていた。
「どのチームも優勝するとうれし涙を流しますが、あの時の涙はすごかったですね」
学校関係者も地元・江戸川区の人たちもみんなが泣いていた。小倉率いる関東第一は、こうして創立60周年という節目の年に甲子園初出場という偉業を成し遂げたのだった。
【初の甲子園でベスト8進出】
翌朝の新聞が待ち遠しかった小倉は、夜明け前から寮の玄関で朝刊が届くのを待っていた。そこへひとりの1年生が素振りをしにやって来た。2年後の選抜で、主将としてチームを準優勝へ導くことになる田村直樹である。その時、田村は小倉にこう言ったという。
「監督、自分は悔しいんです。先輩たちが優勝したことはうれしいですけど、初出場での胴上げは、自分たちがやりたかった」
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