【大学野球】地方の公立大学から代表候補合宿に参加 矢花大聖が経験した濃密な3日間「こんな僕でも話してもらえるのかな」 (4ページ目)
そう語る矢花だが、その表情は充実感が満ちていた。矢花は「学んだことを持ち帰って、明日から練習したい」と笑った。来年はプロ志望届を提出できるだけの選手になりたいと考えているという。
今回の合宿で得たものをチームメートにはどのように伝えたいか。最後にそう尋ねると、矢花は少し考えてからこう答えた。
「みんな、野球になると目の色が変わるということを伝えたいです。ウチの大学は野球と私生活の区別がつかず、ダラダラしてしまう選手が多いんです。代表候補たちを見ていると、練習が始まると目つきが変わりますよね。それが実戦になると、さらに目つきが鋭くなって。集中力の入れ方、持っていき方の違いを感じました」
矢花は「それと」と言葉を継ぎ、こんな思いを語った。
「国公立の大学で野球をしていても、上を目指してやっていればこういう場所に来られる可能性があるんだと示したいです。後輩のなかには、『上の世界でもやれるだろ』と思うようなポテンシャルがあっても、モチベーションが低い選手もいて。そんな選手に『あきらめてほしくない』と思っているんです」
たった3日間であっても、人生観が大きく揺さぶられることもある。矢花大聖の精悍な表情を見て、今回の代表候補合宿の意義深さを感じずにはいられなかった。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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