絶対的エースから球界を代表する名クローザーへ オリックス平野佳寿が貫いた「コンディション重視」の投球哲学 (3ページ目)
高校時代に最速130キロ台だったストレートは、コンスタントに140キロ台中盤をマーク。しっかりヒジが上がり、高いリリースポイントから右バッターのアウトローへ決まるストレートに磨きがかかり、関西ナンバーワンの評価は揺るぎないものになっていった。
【マウンドでしっかりと立つ】
そして平野がコンディションの話をするなかでよく語っていたのが姿勢についてだ。
「立っている姿勢が悪いと投球にも影響します。少しの体のズレで肩の開きが早くなったり、腕が遅れて出てきたり......。体が少し反れるだけでも違和感があるので、そんな時は前屈したりして姿勢よく立てるように整えます。調子が悪いと感じた時は、フォームどうこうより、真っすぐ立てているかを最優先に考えます」
試合中に正しい姿勢を保つためのチェックポイントを教えてくれたこともあった。
「投球の合間にマウンドからセンターポールを見ます。ポールを体の中に入れるイメージをつくって、姿勢を真っすぐにして、体を整えます」
マウンドでしっかりと真っすぐ立つ。その意識だけはプロの世界に進んでも、海の向こうに渡っても変わらなかった。
大学4年のドラフト前、平野はまもなく入るプロの世界について、こんなことを語っていた。
「ローテーションを1年間守っていける投手になること。そのためにもコンディションが大事。上へ行けば行くほど、自分の体を知っている人が伸びると思いますから」
働き場所は先発からリリーフに変わったが、大きな故障もなく投げる平野の姿を見るたび、あらためてコンディショニングの大切さを痛感させられる。
来季の去就についてまだ明言していないが、少しでも長く、美しい立ち姿から放たれる平野の渾身の一球を堪能したい。
著者プロフィール
谷上史朗 (たにがみ・しろう)
1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。
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