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【夏の甲子園2025】尽誠学園・奥一真が圧巻の1試合3盗塁 前年覇者・京都国際を揺さぶった小兵の意地

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

甲子園で光ったスーパー走塁術(後編)

 8月16日の第3試合の京都国際(京都)対尽誠学園(香川)では、手に汗握るクロスゲームが展開された。熱戦のなかでとびきりの存在感を見せたのが、尽誠学園の奥一真(3年)だ。京都国際の強力バッテリーから、なんと3盗塁をもぎ取っている。

 奥は身長164センチ、体重57キロと小柄で、小技を得意にする9番・二塁手。だが、選手アンケートによると、50メートル走のタイムは6秒4。特別に足が速いわけではない。香川大会では、5試合で1盗塁に留まっている。
 
 奥はなぜ、京都国際から3盗塁を記録できたのか。本人の証言をもとに振り返ってみよう。

京都国際戦で1試合3盗塁を決めた尽誠学園・奥一真 photo by Matsuhashi Ryuki京都国際戦で1試合3盗塁を決めた尽誠学園・奥一真 photo by Matsuhashi Ryukiこの記事に関連する写真を見る

【自らベンチにアピール】

 1個目は0対1と、ビハインドを追う3回裏に記録された。先頭打者として右前安打を放った奥は、カウント1ボール1ストライクからスタートを切る。

 打者の金丸淳哉(3年)がスライダーを空振りし、京都国際の捕手が二塁へ送球。だが、送球はわずかに逸れ、中堅前へと転がった。際どいタイミングに見えたが、奥は迷わず三進。無死三塁とチャンスを広げた。

 じつはこの場面、サインは「ヒットエンドラン」だったと奥は明かす。

「今日は相手ピッチャーとのタイミングが合っていて、『いけるな』という感覚がありました。クイック(モーション)もあまり速くなかったので。送球が逸れて、センターの位置とボールの位置を見て、『いける』と迷いなく走りました」

 この回、尽誠学園はセーフティースクイズに失敗するなど、好機を生かせず無得点に終わる。しかし、奥の2個目の盗塁が得点につながる。

 5回裏、無死一塁で打席に入った奥は、送りバントに失敗。ヒッティングに切り替えるが、三塁ゴロに。併殺崩れで奥が一塁に残った。

 ここで奥は、ベンチに「アピール」をしている。

「自分から『スタートを切れるよ』ということを示すために、疑似スタートを切っていました。すると西村(太)先生が読み取ってくれて、盗塁のサインが出ました」

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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