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2026年ドラフトの目玉がわずか10球のアピールで日本代表入り 青山学院大・鈴木泰成の驚異のポテンシャル (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 のしかかる重圧も大きかったのではないか。そう尋ねると、鈴木は涼しげな表情でこう答えた。

「プレッシャーはもちろんあったんですけど、みんなが『いつもどおりのピッチングをしたら大丈夫だよ』と言ってくれたので。初めての先発としては、合格点だったと思います」

 合格点どころではなかった。鈴木は9イニング、137球を投げ切り、2失点で完投勝利を収める。息を吹き返した青山学院大は、翌3回戦をエース右腕・中西聖輝が15三振を奪う快投を見せ、2対1で勝利。そのまま逆転優勝、リーグ5連覇を果たした。

 この亜細亜大戦は、いずれ鈴木の野球人生を変えた一戦として位置づけられるような気がしてならない。

 青山学院大で一段一段、ステップを踏む鈴木だが、目の前には常に格好のお手本がいる。大学1年時には常廣羽也斗(現・広島)、下村海翔(現・阪神)。そして2年以降は1学年上の中西が、常にエースとして君臨している。

 中西のすごさについて尋ねると、鈴木は立て板に水のごとく語り始めた。

「全球種で勝負できることと、調子の波が少なくて、常に安定して投げられることですね。シーズン終盤になっても、パフォーマンスが落ちないところも見習わないといけないです。ストレートも変化球も使い方が上手で、いかにも『ピッチングをしているな......』と伝わってくるピッチャーだと思います」

 その言葉からは、鈴木の飽くなき向上心が滲み出ていた。

 鈴木は初の代表ユニフォームを身にまとい、日米大学選手権でどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。鈴木泰成の成長を見守る時間。それは日本野球の近未来を夢想する時間と同義と言っていい。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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