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高校時代は控え投手 中京大・大矢琉晟&沢田涼太が大学選手権で見せた大器の片鱗

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

大学野球選手権大会で見つけた5人の好素材(前編)

 東北福祉大の7年ぶり4回目の優勝で幕を下ろした第74回全日本大学野球選手権大会。バックネット裏には連日プロ球団スカウトが押し寄せ、有望選手のプレーに目を光らせていた。

 今大会は立石正広(創価大・二塁手)、堀越啓太、櫻井頼之介(ともに東北福祉大・投手)、伊藤樹(早稲田大・投手)、中西聖輝(青山学院大・投手)、小田康一郎(青山学院大・一塁手)、大塚瑠晏(東海大・遊撃手)といったドラフト候補が登場した。

 ドラフト戦線のメインストリームを走る彼らをよそに、異彩を放ったニューフェイスもいた。今回はそんな5選手を前・後編に分けて紹介していこう。

全国の舞台で大学初勝利を挙げた中京大・大矢琉晟 photo by Kikuchi Takahiro全国の舞台で大学初勝利を挙げた中京大・大矢琉晟 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る

【全国大会で大学初勝利】

 今大会で最大の衝撃と言ってよかったのは、大矢琉晟(中京大)の台頭だ。

 中京大には高木快大(はやと)というドラフト上位候補の大エースが君臨するが、今大会はコンディション不良のため登板を回避した。ところが、結果的に高木の不在が、中京大投手陣の層の厚さを際立たせることになった。

 6月11日、2回戦の近畿大戦で先発したのが、大矢だった。今春のリーグ戦登板したのはわずか4試合、4回1/3のみ。不振のため、ベンチから外れた試合もあった。

 大矢は最速155キロ(ブルペンでの計測)の速球派右腕として一部で話題になっていたものの、中京大が誇る高木と伊藤幹太(2年)の二枚看板の陰に隠れる存在だった。

 しかし、東京ドームのまっさらなマウンドに立った大矢は、風格すら漂わせていた。身長178センチ、体重82キロの均整の取れた体格で、スリークォーターから力強く右腕を振る。立ち上がりから3球連続で151キロをマークしたが、ストレートの勢いと球威は間違いなく今大会トップクラスだった。

 大矢は7回を投げ、被安打3、奪三振8、与四死球0と圧巻の内容で無失点に抑えた。球数はわずか86球である。

 試合後、大勢の報道陣に囲まれた大矢は、大事そうに硬球を握りしめていた。

「ウイニングボールをもらったのは初めてなので、うれしいです」

 リーグ戦でも勝利投手になったことがないのに、全国舞台の大一番で大学初白星を記録してしまった。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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