高校時代は控え投手 中京大・大矢琉晟&沢田涼太が大学選手権で見せた大器の片鱗 (2ページ目)
【高校時代は畔柳亨丞の控え】
しかも、相手は大学屈指の強打線を擁する近畿大である。ドラフト候補の勝田成、野間翔一郎、阪上翔也と能力の高い左打者がズラリと並ぶ。1回戦の神奈川大戦では12安打8得点を記録し、7回コールドで圧勝している。
強打線を相手に恐れを抱くことはなかったのか。そう尋ねると、大矢はあっけらかんとした様子で答えた。
「そんなになかったです。動画で見て、いい左バッターが揃っていることと、積極的に振ってくるのはわかっていたんですけど、むしろ振ってくれるほうがいいなと思っていました。自分の真っすぐで押していけると思っていたので」
報道陣との受け答えをする大矢を観察してみる。淡々と質問に答える大矢は、ウイニングボールを右手の人差し指と中指の間で頻繁に挟んでいた。ウイニングショットである、フォークの握りである。おそらく無意識なのだろうが、このフォークも近畿大打線を牛耳る一因になった。
中京大中京高では3年春のセンバツに出場したものの、背番号2ケタの控え投手だった。エースは畔柳亨丞(現・日本ハム)。当時の大矢は最速141キロで、サイドハンドの投手だった。
大学2年春の終わりに右ヒジを手術し、自身の投球フォームを見つめ直す時間ができた。そこで腕を振るアングルを高くして、現在のスリークォーターに落ち着いた。
この日の快投は、自分でも驚くような一世一代の投球だったのか、それとも実力を発揮できただけなのか。そう尋ねると、大矢は毅然とした口調でこう答えた。
「もともとボール自体には自信があったので。リーグ戦での力をそのまま、今日は出せました」
実戦での最高球速は153キロ。報道陣から今後の進路を問われると、「プロ一本です」ときっぱり答えた。秋にかけて実績を積み重ねることができれば、その評価はさらに上昇していきそうだ。
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