「なぜ自分が...」 大阪桐蔭「森友哉世代」の主力・福森大翔が語る希少がんと闘う壮絶日々 (2ページ目)
「病気をしてひとつわかったのは、『人間って簡単に死ぬんや』ってことでした。だから毎朝、目が覚めたら『ああ、今日も生きてたな』って確認するんです。胃が原発で、そして再発して......去年9月にリンパと肝臓へ転移したので、完全にステージ4です。しかも僕の場合は、抗がん剤が効きづらい希少がんのGIST(消化管間質腫瘍)というのがまた厄介なところで......」
とある日曜日の午前中の喫茶店。ゆったりとした時間が流れる店内に、今年7月で30歳になる元球児の声が切なく響いた。
日本人男性の平均寿命が81歳を超える高齢化社会にあって、「なぜ自分が......」「なぜこのタイミングで......」と、頭のなかで答えの出ない問いが何度も繰り返されていたことだろう。
【2つの希少がんが同時に進行】
人生が一変したのは2021年、26歳の時だった。
福森は大阪桐蔭卒業後、立命館大に進学し、大学選手権や明治神宮大会を経験。その後は大手ハウスメーカーに就職し、週末には中学生のクラブチームでコーチを務めていた。仕事にも慣れ、子どもたちと過ごす時間もますます楽しくなっていた──そんな矢先のことだった。
胸やけが気になり、近くの病院に向かうと、「逆流性食道炎でしょう」と薬を処方された。当時は、一度のランチで2種類の定食を食べるほどの大食漢。「食べ過ぎか......」と、薬を飲むもすっきりしない。
すると11月末、クラブチームの卒団式に出席したところ、腹部に強烈な痛みが走り、救急車で搬送。急性膵炎で即入院となった。
さらにその際、画像診断により胃から十二指腸にかけて14cm、胃の裏側にも9cmの腫瘍があることがわかり、細胞を採取。病理検査を行なった結果、それらの腫瘍は悪性で、かつ消化管間質腫瘍(通称・GIST)のSDHB型と遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群という、極めて発症率の低い2つの希少がんが同時に進行していることが判明した。
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