【選抜高校野球】タレント揃いの高松商はなぜ初戦で敗れたのか? プロ注目の2人の速球派右腕が味わった屈辱 (3ページ目)
しかも対峙するのは早稲田実の強力クリーンアップ。3番の灘本塁にはファウルで粘られた末、11球目となる146キロをセカンド左へと弾き返される(内野安打)。4番の山中晴翔には147キロをレフト前に運ばれた。
犠打を挟んで6番の喜澤駿太には143キロをレフトへ2点適時打。さらに7番・中村心大には146キロをセンターへ適時打を浴びる。ここで高橋の交代が告げられた。
被安打4、失点3。奪ったアウトは、犠打による1個だけだった。
試合後、高橋は悔しさを噛み殺しながら、こう語った。
「今日は自分のせいで負けたようなものなので。もっと変化球を投げられたら、結果も違ったと思います。球が速くても、何度も続けていたらタイミングを合わされるのは当たり前ですから。もっとコントロールを磨いて、変化球を使えるようにならないといけないです」
そもそも、なぜ高橋の存在がヴェールに包まれていたのか。それは高校2年時に腰椎分離症を発症したことが原因だった。
「半年くらい腰の治療をしていて、復帰したのが2年秋の新チームが始まったくらい。ずっと投げていなかったので、公式戦で信頼を得るまでになりませんでした。メディシンスローやウエイトトレーニングなど、基本的なことを続けていたら、少しずつ結果になってきました」
入学時に最速133キロだったスピードは、現在152キロに達した。さらに握力が右手78キロ、左手76キロと驚異的な数値を叩き出すように、体の強さにも自信がある。
高橋は「高卒でプロに行きたいです」と希望を口にしつつ、こう続けた。
「でも、今の力じゃまだまだダメです。」
甲子園で味わった屈辱を夏への糧にできるか。高松商が誇るふたりの速球派右腕は、甲子園へのリベンジを誓っている。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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