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藤浪晋太郎が明かした阪神時代に苦しんだ制球難 「眠れなかったり、夢でうなされて起きたり、円形脱毛症にもなったり」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 ただ大事には至らず、シーズンも乗り切ったが、翌年3月にWBCに参戦。すると例年とは違う調整を強いられ、いつもと違うボールを投げ、加えて実戦不足......。大会を終え帰国し、3月末に二軍戦で調整登板を行なったところで、はっきりを異変を自覚した。

「その試合がすこぶる悪くて、自分のフォームじゃないという感じで。『あれ?』という感覚のままシーズンに入ったら、まったくコントロールが効かなくて......」

 そのシーズンの初登板となった京セラドームでのヤクルト戦。5回2失点ながら、9四死球の大乱調。ここからどっぷりと制球難の沼にのめり込んでいった。

【藤浪が苦しんだ「なんか違う」という感覚】

 ただ、藤浪の制球難について、大阪桐蔭時代の同級生に話を向けると、「もとからです」「甲子園がよすぎたんです」と、あえて笑みを浮かべて辛口評で返ってくる。そんな声に藤浪も頷きつつ、このように語る。

「抜けるのはもとからあったんです。気にしてなかったのは、次の球で修正する自信があったから。でも、それができなかったのがあの時で、指先の感覚が消えるイップス的な感じとは違って、どう言ったらいいのか......ボールをとらえられない、1球で立ち返れない。『なんか違う』というのが2017、2018年と続いて、なかでも一番やばかったのが2018年だったと思います。眠れなかったり、夢でうなされて起きたり、円形脱毛症にもなったり。あとで考えれば、おそらく軽い自律神経失調症のような感じだったと思います」

 思うように投げられないストレスに加え、周囲からはイップスを疑う声も上がった。しかし、ここははっきりと否定する。

「イップスだと言えば、周りは理解するのが簡単だからそれで片づけたい。でも、イップスはあんな次元じゃなくて、もっとボールを地面に叩きつけたり、怖くてマウンドに上がれなかったりする。でも、そうじゃない。『違うんやけどなぁ』『でも、世間はそう言うよな』って感じで思っていたのが、あの頃でした」

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