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【選抜高校野球】東洋大姫路・岡田龍生監督 「最近強くなりましたね」の若い記者からの声がけに複雑な胸中 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigai Shiro

「準々決勝の4試合目やったんですけど、あの頃の甲子園は今と違って、試合が近づくとスタンド下の通路に両チームの選手が向かい合わせに座って待っていたんです。そこで3試合目の浪商と川之江(愛媛)の試合が延長になって、11回、12回、13回......最後は浪商が勝ったんですけど、ウチの監督があまりにも待っている時間が長いから、どこからかおにぎりとかバナナを持ってきてくれて、食べたのを覚えています。

 あと、通路に試合中継のモニターが流れていて、実況の方が『第4試合を中止にはできません』と言っていて、『何があっても最後までやる』『中止はない』という気持ちになっていましたね。今なら継続試合とか1試合だけでも翌日とかなるんでしょうけど、あの時代は準々決勝の4試合目だけを中止にはできなかったのでしょう」

【打球直撃で病院直行】

 小雨の中で始まった試合は、池田が2回に2点を先制するも、4回に東洋大姫路が追いつく。

「池田が守ったら雨が強く降る、ウチが守ったら小雨になるといった感じで、『ツイてるぞ』などと言いながらね。それで4回くらいには照明もついて、みんなのテンションが上がっていたら、僕の右足にボールが直撃したんですよ」

 5回表の池田の攻撃、同点の無死一塁で相手は8番打者。三塁を守る岡田は送りバントを決め込み、猛然とダッシュ。ところが打者がバスターに切り替え、弾き返された打球が岡田の右膝付近を直撃したのだ。

「強烈な打球でとにかく痛いし、直後は足が動かなくて。そこで試合がストップして、ズブズブのグラウンドに寝かされ、担架でバックネット横の部屋に運ばれたんです。でも、少ししたら痛みがましになってきたので、『やれます』って言ったんですけど、その前に監督が審判に交代を告げていて......」

 そこから病院に向かい、診察したのち甲子園へUターン。ベンチに戻ると、味方打線が得点を重ね、9回を迎えた時には6点差をつけていた。ところがここから池田が猛攻を見せて、気がつけば1点差。

 さらに二死一、二塁まで攻め込まれたが、最後は水しぶきが上がるなかセカンドゴロでゲームセット。8対7の大乱戦を制し、最後は岡田もベンチ前で校歌を歌い、チームはベスト4進出を決めた。

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