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プレーするだけが野球じゃない プロを目指す高校球児たちが集まるが舞台を支えた元女子マネジャーたちの挑戦 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

「知らない子と一緒のチームで野球をやるのは心配です......」

 最初はそう漏らす参加者も少なくなかったという。高校時代に公式戦の出場機会がほとんどなく、自分に自信を持てない選手もいた。

 だが、失敗しても次があるリーグ戦という仕組みや、積極的なチャレンジを推奨する声かけもあり、前向きにプレーする選手が増えていった。

 さらに彼らを後押ししたのが、初日に行なわれたスポーツマンシップ講習だ。「尊重、勇気、覚悟」というスポーツを通じて得られる精神を学び、リーグ戦で実践した。

 その成果が見事に表れたのが、エスコンフィールドでのファイナルだった。ゲームセットの直後、勝利したチームだけでなく、敗れた側も全員マウンドに集まって喜びを分かち合ったのだ。

「その瞬間、鳥肌が立ちました。いつの間にみんな、こんなに成長したんだろうって」

 そう話したのが、アナウンスを担当した大学2年生の山内さんだ。青森明の星高校で女子マネジャーだった頃、「リーガ・アグレシーバ」という阪長代表が主宰するリーグ戦に参加し、スポーツマンシップ講習を毎年受けた。山内さんは高校3年間をかけて学んだが、リーガ・サマーキャンプに参加した選手はわずか12日という期間でスポーツマンシップを体現してみせたのだ。

 エスコンフィールドのアナウンス室で山内さんは鳥肌を立てながら、"隠れたファインプレー"を見せた。試合終了直後、通常行なわれる「○対○でどちらが勝ちました」というアナウンスをあえて割愛したのだ。

「勝ち負けにとらわれるべきではない、と思ったからです。負けた側もマウンドに行って喜ぶなんて、いつの間にスポーツマンシップを身につけたのかなって。選手たちは講習を1回受けただけなのに、高校3年生の吸収力はすごいなと。スポーツマンシップを身につけた選手たちを見て、どっちが勝ったとか、絶対に言うべきじゃないと思いました」

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