プレーするだけが野球じゃない プロを目指す高校球児たちが集まるが舞台を支えた元女子マネジャーたちの挑戦
夏の甲子園の地方大会で敗れた高校生たちにプレー機会を設けようと2024年8月、北海道で開催された「リーガ・サマーキャンプ」。今年の第2回に向けて、3月3日にエントリーが始まった。
昨年はNPBやMLBのスカウトが視察に訪れ、秋のドラフト会議で石田充冴(北星学園大学附属高校)が巨人に4位、澁谷純希(帯広農業高校)が日本ハムに育成2位で指名されて入団。さらに、軽度の知的障がいを抱える工藤琉人が独立リーグのKAMIKAWA・士別サムライブレイズと契約に至った。
ほかには大学進学を控えてプレー機会を欲する者、高校時代に補欠で公式戦に出場できなかった者たちが輝きを放ったなか、彼らを陰で支えたのが"元女子マネジャー"だった。
初開催のリーガ・サマーキャンプを陰で支えた山内美月さん(写真左)と森岡鈴さん photo by Nakajima Daisukeこの記事に関連する写真を見る
【かつては指示待ち人間だった】
「彼女たちに運営を手伝ってもらい、女子マネジャーの力や可能性をあらためて感じました」
そう話したのは、「リーガ・サマーキャンプ」を開催した一般社団法人「ジャパン・ベースボール・イノベーション」の阪長友仁代表だ。チーム単位ではなく、個人でエントリーして実戦機会を設けるという取り組みをゼロからつくるうえで、阪長代表が真っ先に探したのは、一緒に運営を担ってくれる学生だった。
「高校野球では指示があってから動く場合が多いけど、リーガ・サマーキャンプに参加してくれたふたりは自ら機転を利かせて行動してくれました。そのおかげでリーグ戦の運営がすごくスムーズに進みました」
阪長代表がそう感謝するのは、森岡鈴さんと山内美月さん。高校卒業後に看護学校、大学とそれぞれの道に進んだ"元女子マネジャー"たちなくして、リーガ・サマーキャンプの成功もなかった。
「明日、栗山英樹さんが視察に来られるから、セレモニーで司会をやって!」
阪長代表は毎日のようにそんな無茶ぶりをした。会場の栗山町民球場の近くに暮らす2023年ワールド・ベースボール・クラシック優勝監督が翌日視察に来るので、選手たちにサプライズを仕掛けようというのだ。
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。