プレーするだけが野球じゃない プロを目指す高校球児たちが集まるが舞台を支えた元女子マネジャーたちの挑戦 (2ページ目)
相手は超有名人で、高校球児にとっては雲の上のような存在だ。女子マネジャーだった頃の森岡さんなら、うまく対応できなかったかもしれない。いわゆる指示待ち人間で、自分の考えをうまく話すことも苦手だったからだ。
ところが、リーガ・サマーキャンプという前例のない舞台では阪長代表をはじめ、行動的な大人たちに囲まれた。同じ立場で参加した山内さんも、自ら気づいたことを積極的に行なっていく。森岡さんはそんな環境に飛び込み、思考が変化していった。
「今までの私は、『自分にはできないから、黙って見ておく』と、はなからあきらめていました。でもリーガ・サマーキャンプでは自分以外の全員が『やってやる!』という感じだったから、『私、できないから......』とただ見ているわけにはいきません。『自分もやらなきゃ』と思って行動してみたら、すごく面白くなっていきました」
開会式の司会や試合中のアナウンス、写真撮影やSNSの運用、球場の環境美化を誰の指示もなく進めていくうち、「今、私はこれをする必要がある」と考えて動くクセが身についた。
【アナウンスに込めた隠れたファインプレー】
じつは、森岡さんがリーガ・サマーキャンプへの参加を決めた裏には、高校時代のコンプレックスがあった。高校2年秋、受験勉強に備えることに加え、周囲との人間関係がうまくいかなくなり野球部を退部したのだ。
「サマーキャンプでマネジャーをできるのはチャンスと思って参加したら、周りのみんなから『ありがとう』とすごく言われました。みんな野球が大好きで、今まで自分が関わったことのない価値観を持っている人たちばかり。1日の試合が終わるのがすごく嫌で......毎晩、次の朝が来るのを楽しみにしていました」
26万9500円の参加費を払ってエントリーした選手たちは、"負けても次がある"リーグ戦で積極的にチャレンジした。木製バットは強く振り、芯で捉えないと会心の打球が飛んでいかない。入学から2年4カ月やってきた高校野球とは、異なる環境がリーガ・サマーキャンプでは待っていた。
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