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16年ぶりに活動再開の名門・日産自動車野球部 公立大出身の無名左腕・友野聡太の軌跡 (2ページ目)

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu

 その成果は顕著に現れ、4年春にはストレートの球速が140キロを超えるまでに成長。リーグ戦では優勝こそ逃したものの、防御率1.70の好成績を収めた。さらに昨年8月15日の神奈川県野球交流戦で、DeNAの二軍と対戦する神奈川大学リーグ選抜に2部リーグから唯一選出された。

 この試合で友野は、同点の8回二死一塁の場面で登板。右打者に対し、得意のクロスファイヤー(利き腕の対角線に投げるストレート)を駆使し、ショートゴロに打ちとる見事な火消しを見せた。

【強みはストイックに取り組めること】

 この試合を観戦していたのが、2025年の野球部復活に向けて選手の採用を担当していた日産自動車の伊藤祐樹監督だった。伊藤監督は以前にも友野の練習を視察し、「球に力があり、指先の器用さを感じました。持っている力を発揮できれば、十分に社会人野球で通用する」と評価していた。そしてこの試合での堂々としたピッチングを見て、採用を決断したという。

 プロ選手を相手にした、いわば"最終トライアウト"のような状況だったが、友野は「マウンドに上がってしまえば、緊張はしませんでした。楽しいといったら変ですが、ワクワクしました」と強心臓ぶりを発揮し、復活する名門の扉をこじ開けた。

 内定後、秋の2部リーグで圧巻の投球を披露。9月15日の鶴見大戦では、9回を投げて3失点、15奪三振の快投を見せた。試合には敗れたが、1部リーグの経験がある相手に対して、キレのいいストレートで押し、スライダー、カーブを見せ球にし、決め球にはブレーキの効いたチェンジアップが冴え渡った。また、「ストライクゾーンが広めだったので......」と球審の特徴を把握し、ゾーンを広く使う頭脳的な投球も展開した。

 日産自動車に入部するにあたり、強豪校出身の選手や強豪社会人チームとの対戦について、「レベルの高い環境でプレーすれば、自分の能力もさらに向上すると思うので、とてもワクワクしています」と、新たな挑戦に期待を膨らませた。

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