高校野球の「裏方」をヒロド歩美が取材し続けるワケ 夏の甲子園・滋賀学園のダンスへの思い (2ページ目)

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【印象深かった選手の熱と監督の涙】

ーー背景という部分で、何か取材で印象に残っていることはありますか。

 1年半ほど前に、センバツの21世紀枠関連で石橋(栃木)の取材に行ったことがあるんですけど、当時1年生だった入江祥太くんを取材した時に「文武両道」と言っていたのが印象的でした。グラウンドのベンチに参考書や模試の問題用紙なんかがあって、すごく新鮮だったのを覚えています。

 今年3年生になって、夏前に会ったらやっぱり「文武両道」と言っていて、ブレていないのはさすがだなと思いましたし、甲子園後は翌日から「受験勉強に専念します」と言っていました。

 入江くんは作新学院中等部の出身なのですが、公立に入って強豪校を倒したいという夢があったんです。彼が中学校の時、石橋が作新学院を破る試合を見て、石橋に進学を決めたそうです。だからこそ、今年の栃木県大会で作新学院を倒し試合後に整列した時、心が震えたと振り返っていました。少年時代にどのタイミングでどの試合をみて、進路を描くのかっていう意味ではすごく興味深いですよね。なので、最近はリトルシニアの取材も始めたいって思っています(笑)。

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ーー少年時代は何に影響されるか、本当にわからないものですね。

 あとは、掛川西(静岡)の大石卓哉監督のエピソードも印象深く残っています。大石監督は掛川西出身で、26年前甲子園に出場した背番号6のキャプテンでした。26年ぶりに出場した今年のキャプテンも背番号6の山下陸人くん。掛川西は髪型が自由なんですけど山下くんは丸刈りで、24時間野球に心血を注ぐ泥臭いチームのシンボル的存在です。

 大石監督に山下くんへの激励の言葉を伝えてもらいたいとお願いしたら、大石監督は涙して「この子たちと野球ができて幸せです。僕は何もしていないけど、特等席で彼らの野球を見ることができて幸せでした」って......。すごくグッときました。

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