【夏の甲子園】健大高崎を支える通算本塁打2ケタの控え選手たち 野球エリートが直面した過酷な現実 (3ページ目)
そして、岸野は苦笑を浮かべながらこんな話を教えてくれた。
「小学生の頃の友だちは『おまえなら(試合に)出れるでしょ!』と言われるんです。ちょっと心苦しいですね」
【チャンスは全員分け隔てなくもらえている】
背番号17の白石は千葉の名門・佐倉シニアの出身だ。当時は石塚裕惺(現・花咲徳栄)、西崎桔平(現・帝京)、洗平比呂(現・八戸学院光星)といったタレントが揃うなか、白石はキャプテン・4番打者の重責を担った。
身長182センチ、体重83キロの大型外野手。当然ながら高校でも主軸を打ちたいと考えていた白石だったが、過酷な現実に直面する。
「練習初日に周りのレベルを見て、『これは違うな......』と思いました。とくに背番号1ケタの3人(外野手の横道、佐々木、斎藤)はレベルが高かったです。彼らは、最初は内野手だったので、外野に来た時は『ヤバいな』と焦りました」
厳しい競争を繰り広げるなか、「なんであいつが使われて、自分が使われないんだ」という不平不満が出ても不思議ではない。だが、白石は自分が2ケタ背番号をつけることに納得していると語る。
「力量に差があっても、チャンスは全員分け隔てなくもらえていますから。土日はずっと練習試合を組んでもらえて、たとえベンチに入れないような選手であっても試合に使ってもらっています」
今年度の健大高崎は今夏の甲子園までに25試合の公式戦を戦う傍ら、練習試合を117試合も組んでいる。白石によると、「そのうち半分にレギュラーメンバーが出て、残りの半分に2枚目を争うメンバーが出ている」という感覚だという。試合に出ているからこそ、本塁打数も増えていく。
それでも、レギュラーに遠く及ばない選手が腐ってしまうことはないのだろうか。そんな疑問をぶつけると、白石はこんな話を教えてくれた。
「いいことも悪いことも、ひとりから伝染していきます。正直に言って『今日はきついな』という日もあるんですけど、実際に気持ちを切らしたら周りに伝染します。キャプテンの箱山もそんな話をしているんですけど、そんなチームにしたくないので自分は気持ちを切り替えるようにしています」
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