【夏の甲子園】健大高崎を支える通算本塁打2ケタの控え選手たち 野球エリートが直面した過酷な現実 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

「自分が高校で2ケタの背番号をつけるとは想像していなかったのでは?」と聞くと、岸野は「中学までは想像できませんでした」と明かし、こう続けた。

「中学野球を引退したあとに健大に誰が入ってくるかを聞いたり、実際に入学してレベルを実感したりして、『まずはベンチ入りを目指そう』と思いました。1個上、2個上の先輩のレベルも高かったので、自分たちの代になった時を想像して、『どこのピースに入れるか?』を考えながら練習していました」

 チームから提供されたアンケート資料を見ると、岸野の選手評は「なんでもこなすスーパーサブ」と記されていた。内外野を守れる特性を生かし、今春のセンバツ準決勝・星稜(石川)戦では「7番・レフト」で先発出場。今春の群馬県大会ではファーストの森山がサードに回ったチーム事情もあり、岸野が「背番号3」をつけた。だが、夏の群馬大会からは再び背番号が13に戻っている。

 レギュラーまで手が届きそうで、届かない。そんなもどかしい状況が続いている。

 自分が試合に出たい思いと、チームとして勝ちたい思い。ふたつの思いはどちらのほうが大きいのだろうか。酷な質問と思いつつ聞いてみると、岸野は迷うそぶりも見せずに即答した。

「最終的にチームの勝利のためにやっています。もちろん試合には出たいですけど、出られなくても自分ができる役割に徹することだけを考えています」

 出られなくてもできる役割とは何か。岸野は「今日ならランナーコーチとか......」と具体例を挙げつつ、こう続けた。

「物事を冷静に見られるのが自分の武器なので、試合に出ているメンバーにその視点から声をかけることもチームの戦力になると思っています」

 岸野の将来の夢は「スポーツ関係の仕事につくこと」だという。

「中学までは『プロ野球選手になる』と言っていたんですけど、健大で『こういうヤツがプロに行くんだろうな』という選手を見てきて、自分の力量では厳しいと思いました」

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