大谷翔平の言葉に見る人生観の変化とドジャースのワールドシリーズ連覇へ重要な局面となるトレード期限
ポストシーズンでの「リアル二刀流」に向かい始めた大谷翔平 photo by Getty Images
後編:大谷翔平2025の進化と変化
メジャーリーグも後半戦に突入し、ポストシーズンに向けての戦いが本格化してくる時期になった。7月31日にはトレード期限が迫っており、21世紀のMLBで初のワールドシリーズ連覇を狙うロサンゼルス・ドジャースも、現有戦力の課題を解決すべく、動きに出る可能性は高い。
そんななか、大谷翔平はポストシーズンに向けて「リアル二刀流」完全復帰への階段を着実に登っている。一方で、どれほど比類なき成績を残しても、決して驕ることはない。毎日、無事試合を終えることへの感謝の意を表わすなど、2度の手術の経験も含めてその人生観も変化している様子がうかがえる。
【迫るトレード・デッドラインにドジャースは?】
7月31日のトレード・デッドラインが迫ってきた。今では、優勝をあきらめたチームから主力選手が放出されるのは当たり前となったが、すべての始まりには物語がある。かつて、メジャーリーグでは春のキャンプで整えた陣容で1年間を戦い抜くのが常識だった。そんな慣習を打ち破るきっかけとなったのが、ちょうど100年前の出来事だ。
1922年、ア・リーグではニューヨーク・ヤンキースが、ナ・リーグではニューヨーク・ジャイアンツがペナントレースの真っただなかにいた。どちらも優勝を争うライバルは、セントルイスを本拠とするブラウンズとカージナルス。だがヤンキースは7月23日、ボストン・レッドソックスから三塁手のジョー・デューガンを金銭込みで獲得。さらに7月30日にはジャイアンツも、ボストン・ブレーブスから先発投手のヒュー・マクウィランを買い取った。どちらの補強も即効性があり、結果、両チームはリーグ優勝を果たしてワールドシリーズで激突する。
敗れたセントルイス側からは怒りの声があがった。「ニューヨークの奴らを止めろ! 金で優勝を買っているぞ!」と。これが契機となり、メジャーリーグは補強の期限を設け、最初は「6月15日」を締め切りとするルールが導入された。これがトレード・デッドラインの起源である。
それから1世紀。トレード・デッドラインは定着し、多くの選手が移籍するのが当たり前になっている。今、その渦中にあるのがロサンゼルス・ドジャースだ。オールスター明けにミルウォーキー・ブルワーズに3連敗、ミネソタ・ツインズとのシリーズも落としかけたが、なんとか第3戦の9回裏に逆転勝利。しかしボストンでのレッドソックス戦は再び1勝2敗と負け越し、勢いを欠いている。
そんななか、編成本部長のアンドリュー・フリードマンが動く時が来た。彼は昨オフ、「デッドライン直前のトレードは買い手にとって不利になりがちだから好きではない」と語っていた。だが、今のドジャースはブルペンが明らかに手薄で、加えて強打の外野手も必要な状況球界関係者の間では「確実に動く」というのが共通認識だ。
もっとも筆者は、この時期に負けが込み、弱点が露呈すること自体は、決して悪いことではないと考えている。
ちょうど1年前、ドジャースはオールスター前に4勝8敗、7月末には2勝5敗と苦しんだ。だが、それがかえって補強ポイントを明確にし、先発、リリーフ、さらにベンチを整える絶好のタイミングとなった。首脳陣はベンチの選手を競わせ、そこで生き残ったベテラン、キケ・ヘルナンデスが9月以降も躍動し、プレーオフでも存在感を示している。今季もまた、チームが一段ギアを上げるための転換点が必要なのだ。
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著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

