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夏の甲子園で見つけた逸材! プロ注目の好打者を併殺打に仕留めた有田工1年生・田中来空の強靭なメンタルと技術力の高さに驚愕 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 さすがの岩井も、バットコントロールしきれずにどん詰まりのショートゴロ。併殺に打ちとったのだから、「お見事!」とうなるしかなかった。

 近畿でも有数の好打者が、難しい内角といえどもあれだけ差し込まれのだから、ストレートはかなりスピンが効いているのだろう。球速表示は130キロ前後でも、打者の体感スピードは10キロ増しに感じているのかもしれない。

【初球の変化球を強振】

 またその裏、打席が回ってきたら、田中はどっしりとした構えから、左投手の初球のスライダーをライト前に痛烈に弾き返した。左腕の変化球に右サイドがまったく開くことなく、フルスイングのジャストミートなのだから、バッティングも只者じゃない。

 9回の投球にも、非凡さがキラキラ光っていた。

 ライトがライナーを弾いて三塁打になった直後、次の打者をスライダー、ストレートと2球で追い込む。8回の投球もそうだったが、ヒットにはなっているが捉えられていないことを、客観的にわかっているような泰然自若なたたずまい。

 打ちとった打球がポテンヒットになり、きっとガッカリしているだろうと思ったら、次打者の送りバントを軽やかな身のこなしで二塁封殺。投げる以外の仕事もしっかりこなす。

 5点リードされて迎えた9回裏、有田工が2点を返すなど反撃を見せたが、田中の決して怯まない投げっぷりが、先輩たちを大いに奮い立たせたように見えた。投打のつながりとは、まさにこういうことを言うのだろう。

 それにしてもだ。2点を追い上げられ、なおも一死一、二塁で、センター前に抜けと思った瞬間、滋賀学園の遊撃手・岩井が長い腕を伸ばし補給すると、そのまま二塁ベースを踏んで一塁へ矢のような送球でダブルプレー。

 その柔らかい身のこなしと、一塁手のミットに突き刺さるような強肩。岩井はすでにプロ注目選手であるが、彼もまた評判以上のプレーにあらためて驚かされた逸材だった。

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著者プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。

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