智辯和歌山に挑んだ和歌山南陵10人の野球部員たち エースは「もうヒジがぶち壊れてもいいから頑張るわ!」と自己最速を更新した (4ページ目)
エースの松下のように大学で野球を続ける部員もいれば、故障のため今夏2打席に留まった背番号10の畑中公平のように野球をやめる部員もいる。これからどんな進路を歩む予定なのか尋ねると、畑中は晴れやかな表情でこう答えた。
「航空自衛隊に入隊して、国の空を守りたいと考えています。和歌山南陵でストライキとか、菓子パン1個の朝ご飯とか、寮のトイレの天井から水が降り注ぐとか、ほかの高校ではできないような、いい体験ができました」
和歌山南陵での3年間を乗り越えられれば、どんなに厳しい世界でも生きていけそうですね。そう聞くと、畑中は「行ってみないとわからないですけど、そうですね」と笑った。
少子化が進む現代にあって、和歌山南陵の経営難は「対岸の火事」ではない。これから校歌のフレーズのように「一歩前へ」進めるかどうかは、私立高校が生き残るための試金石になるのかもしれない。
(おわり)
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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