前橋商の192センチ右腕に幹部クラスのスカウトが集結 投げる姿は高校時代の佐々木朗希を彷彿 (3ページ目)
だが、清水はこんな言葉を口にする。
「周りの人に『おまえはまだ体ができていないから』と言われることもあるんですけど、自分としてはそのなかでもベストを尽くしてやっていきたいんです。たとえ自分のピークが20歳だったとしても全力を尽くして、高校野球でも名をとどろかせたいです」
将来性が高い。体ができれば楽しみ。そうした周囲の評価も、本人からすると現状を否定されているように感じられてしまうのか。そう尋ねると、清水は苦笑しながら「はい」とうなずいた。
苦い記憶がある。昨夏、初めて立った甲子園のマウンドで清水は大きな挫折を味わった。クラーク記念国際(北北海道)との初戦、1対2と僅差で追う8回表に清水はリリーフで起用された。だが、2失策など守備の乱れもあって5失点。わずか2アウトを取っただけで降板している。清水は「力みすぎて、自分の力を全然出しきれなかった」と振り返る。
甲子園への思いを聞くと、清水は「いつも言っていることなんですけど」と前置きしてこう答えた。
「前までは『行きたい場所』でしたけど、今は『行かなければいけない場所』だと考えています。甲子園の借りは甲子園で返さないといけないので。春のセンバツで健大高崎が優勝したので、自分は昨年の経験を生かして勝ちたいですね」
気になる進路については、「春の大会が終わってから考えます」と語るに留まった。ただし、春季関東大会後には熱心に誘いを受けていた強豪大学に断りを入れている。自分自身で課題と向き合える思考力も持ち合わせているだけに、どんな環境でも己を高めていけるだろう。
今後の課題について聞くと、清水は流れるような口調で語り始めた。
「まだ股関節が硬いせいか、歩幅(ステップ幅)が狭くて体の粘りが出せていないと感じます。あまり深く踏み込みすぎると縦の角度がなくなってしまうので、もう半歩から1歩くらい歩幅を延ばして投げるようにしたいですね。そうすれば、もっと低めのボールが伸びるようになると思うので」
いつまでも「未完の大器」とは呼ばせない──。清水大暉の言葉からは、そんな叫びが滲んでいた。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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